メモ:ボトルネックが常に移動している工場の運用の仕方
TOC(Theory Of Constraint:制約理論)では、ボトルネック・ステーションの工程の進捗に併せてジョブを投入せよ、と教えていますが、ボトルネック・ステーションは工場で作る製品が変われば変化します。複数の製品が同時に工場に流れている場合は、製品の流れる量の割合(=製品ミックス、プロダクト・ミックス)が変わればどのステーションがボトルネック・ステーションになるかが変わります。
製品ミックスが常に変わるような工場、そしてそのためにボトルネック・ステーションがどんどん移動してしまう工場について、我々はTOCを適用出来ません。では、どのようにすればよいのでしょうか?
この問題について私は私の考えをまとめたいと思いました。そこで、今まで私が書いてきたことを見直し始めました。
「いろいろな課題」から
そもそもボトルネック・ステーションがあちこちに移動する場合はどうするのか?
- ボトルネック・ステーションがあちこちに移動する場合、その原因が製品ミックスの変化によるものなのか、装置のダウンによるものなのか、原因の調査が必要だと思います。それから、製品ミックスの変化にしろ、装置のダウンにしろ、それらの変化の度合いとその頻度の関係を把握することが必要ではないか、と思います。そしてその変動を減らすことが出来るかどうか検討します。無責任と思われるかもしれませんが、あまりに変動の激しいラインはそれなりのパフォーマンスしか出せないと思います。それはまさにFactory Physicsにおける法則(変動)
- 変動の増加は常に製造システムのパフォーマンスを悪化させる。
- そのものだと思います。ただ、変動が製品ミックスの変動からくる場合APSを使って改善が出来るかもしれません。「ボトルネックのスケジューリングにはスケジューラを使え?」にそのことを少し書きました。
その前に私自身がある時は「ボトルネック」、ある時は「ボトルネック・ステーション」、ある時は「ボトルネック工程」と言葉を不用意に変えていることが気になりました。ここの整理も必要です。
ステーションと工程の違いをはっきりさせ、「ボトルネック」になるのは本来、工程ではなくステーションであること、そしてTOCで「ボトルネック」とか「ボトルネック」工程と呼んでいるのは、ラウティングで最初に登場するステーションの工程であること、など、明確に記述しなければなりません。
そもそも私は、「工程」という言葉を定義していたかしらん?
もうひとつ、重要と思える話題は
仕込み計画によってボトルネックが変わってしまうので苦戦しています。
と書かれているところだと思います。ゴールドラットの「ザ・ゴール」を読んでいても、ボトルネック・ステーションが移動していくのなら、どういうふうにTOCを適用すればよいのか、という疑問が私にもあります。
「DBRの効果を示すモデル(4)」から
- ボトルネックが頻繁に移動する工場ではCONWIPが次善の策として有効である。
- 工場にDBRを適用するためには、工場内のどのステーションがボトルネックであるかをまず把握する必要があります。しかし、今日のように短寿命市場・多品種の生産環境では工場で生産する製品の種類や生産量が頻繁に変化するのでボトルネック・ステーションがあるところに留まっておらず、工場内をあちこち移動する場合が考えられます。そのような場合にはDBRを適用することが出来ません。しかし、プッシュよりもCONWIPのほうがよい特性を示しているので、DBRの代わりにCONWIPを工場に適用することで、ある程度、短サイクルタイムを実現することが出来ます。上記の図1の例では、図11に示すようにDBR適用時とCONWIP適用時で工場の特性はほぼ同じでした。
さらに思いつく課題を挙げておく。
- DBRの適用においてはボトルネック・ステーションの特定が必須であるが、ボトルネック・ステーションは品種ミックスが変われば移動する。短寿命市場環境においては生産する品種が次々に変わることが予想されるが、その場合、どうやってボトルネック・ステーションを迅速に特定することが出来るか?
- 代案としてCONWIPも検討すべきではないか?
- そもそもボトルネックの概念は工場が定常的であることが前提ではないのか?
- ラウティングがループを持ち、複数回ボトルネック・ステーションを通過する場合、DBRをどのように適用すればよいか?
「マニュファクチャリング・サイエンスの適用によるアセンブリ・テスト工程での顧客応答性の向上:Factory Physics®の学習の適用」より
上位エントリー:マニュファクチャリング・サイエンスの適用によるアセンブリ・テスト工程での顧客応答性の向上 概要
「Factory Physics®とサイクルタイムの組織としての知識の増加」の続きです。最初の注目点はWIPの削減であった。リトルの法則の適用により、個々の工場は個々のステーションで目標とする目標WIP量を確立することが出来た。CONWIPのWIP方針が、工場全体のWIP量の制御を維持するために工場が従うべき第一方針として工場に導入された。CONWIPは「一定WIP」の略であり、プッシュ・プル混合システムである。その目標は全ての時間にラインでの仕掛の量を一定に保つことである。WIPの目標値はリトルの法則によって設定された。CONWIPを適切に実行する場合、完了あるいは廃棄になった仕掛が工場を去る時のみ新しい仕掛が引き入れられる。ライン内に変動が存在する場合、CONWIPは従いづらい方針である。ある装置が不安定である、あるいは、ダウン時間が多い場合、アベイラビリティの変動に対して緩衝するために必要であるよりも多くの仕掛が保持される。その結果、他の装置は不安定な装置が製品を出すのを待つのでWIPが枯渇する。よって、装置をビジーに保つために仕掛を追加する誘惑にかられる。しかし、適切な対応は、ラインには仕掛を追加せず、装置前の余分な仕掛数によって明らかになった問題に迅速に当ることであろう。この手続きは制約理論に基づいたキャパシティ割当てプロセスと問題を迅速に浮き彫りにし解決するリーンの概念と完全に整合している。
工場が使用している運用ルールのような変動の他の発生源もまた調査された。先入れ先出し(FIFO)WIP方針の実行と停まっているロットと保留ロットの積極的な監視と処置を強制することに成功した。これらのビジネス・プロセスをサポートのために、それらを測定し追跡するための自動化ツールが開発された。