10.9.参考文献:Quantitative System Performance

10.8.まとめ」の続きです。(目次はこちら

10.9. 参考文献


 この章で我々が開発してきたモデルは、個々のディスクを表現するために負荷独立キューイング・タイプのサービス・センターを用い、これらのセンターでの実効サービス要求時間を繰り返して見積もるものであった。2つの同等に適切な代替の方法が存在する。これらの最初のものは以下のように記述することが出来る。

  • I/Oサブシステムがディスクによってだけ表現され、個々のディスクがディレイ・タイプのサービス・センターによって表現されるようなシステムの待ち行列ネットワーク・モデルを定義する。
  • 以下のように繰り返す。
    • 全てのディスクについて
      • 実効サービス要求時間を見積もる。
      • ディスクでの平均値材時間を見積もるためにこの値を、待ち行列理論からくる公式の中で用いる。
      • この値を対応するディレイ・センターに代入する。
    • 待ち行列ネットワーク・モデルを評価する。
  • システム・スループットの連続する見積り値が充分近くなるまで繰り返す。

この方法は実際には普通である。その起源は知られてないが、それはBard [1980, 1982]によって、Wilhelm [1977]によって、ZahorjanとHumeとSevcik [Zahorjan他 1978]によって、使われた。


 2番目の代替の方法は、Brandwajn [1981]によるもので、第8章で記述したフロー等価と階層モデル化の原理の複数の応用を含んでいる。 

  • 個々のストリング(ディスクは特定のストリングのヘッドにつながっている)を順番に考慮する。ストリング上の個々のディスクが負荷独立キューイング・タイプのサービス・センターによって表現されているようなサブモデルを(可能な全ての客数について)評価することによりFESCを定義する。
  • 個々のコントローラ・サブシステム(ストリングのヘッドとディスクは特定のコントローラにつながっている)を順番に考慮する。個々のストリングが前のステップで定義されたFESCによって表現されているようなサブモデルを(可能な全ての客数について)評価することによりFESCを定義する。
  • 個々のチャネル・サブシステム(コントローラとストリングのヘッドとディスクは特定のチャネルにつながっている)を順番に考慮する。個々のコントローラ・サブシステムが前のステップで定義されたFESCによって表現されているようなサブモデルを(可能な全ての客数について)評価することによりFESCを定義する。
  • CPUと、前のステップで定義されたチャネル・サブシステムFESCから成る高レベル・モデルを評価する。


 この章で採用したモデル構造を含めて、上記に説明した3つのモデル構造のうち2つは、個々のディスクについて実効サービス要求時間を評価する必要がある。非RPSディスクの処理(セクション10.2)は待ち行列ネットワーク・モデル化の伝説に属している。RPSディスクの処理(セクション10.3)も寄与するのが困難である。2つのアクセス可能な翻訳は Wilhelm [1977]とZahorjan、Hume、Sevcik [Zahorjan他 1978]のおかげである。後者の解析は連続する再コネクトの試みの失敗の確率は独立ではない、という事実を組み込んでいる。
 Bardは静的再コネクション・アルゴリズムの場合において [Bard 1980]と、動的再コネクション・アルゴリズムの場合において [Bard 1982]の両方について、マルチパス化に関するオリジナルな業績に功績がある。Bardの方法は問題の最大エントロピー法をよりどころにしている。
 Buzenとvon Mayrhauser [1982]はIBM 3880-13キャッシュ・ストレージ・コントローラのモデル化と性能に影響を与えるさまざまな考察の興味深い解析を提示した。
セクション10.6.2の議論は部分的にはこれらの成果に基づいている。
 Unter [1982]は、IBMのMVSオペレーティング・システムの状況における、通常の測定データからI/Oサブシステムの待ち行列ネットワーク・モデルのパラメータ値を決める過程を調査している。セクション10.7.1での議論は部分的に彼の成果に基づいている。

  • [Bard 1980]
    • Yonathan Bard. 共用DASDとマルチパス化のモデル。CACM 23,10 (October 1980), 564-572
  • [Bard 1982]
    • Yonathan Bard. 動的パス選択を持つI/Oシステムと一般伝送ネットワークのモデル化  Proc. ACM SIGMETRICS Conference on Measurement and Modeling of Computer Systems (1982), 118-129.
  • [Brandwajn 1981]
    • Alexandre Brandwajn. DASDサブシステムのモデル。再コネクションの基本モデル。Performance Evaluation I,3 (November 1981), 263-281.
  • [Buzen & von Mayrhauser 1982]
    • Jeffrey P. BuzenとAnneliese von Mayrhauser. IBM 3880-13キャッシュ・ストレージ・コントローラのBEST/I解析。Proc. CMG XIII International Conference (1982), 156-173.
  • [Hunter 1982]
    • David Hunter. 現実のDASD構成のモデル化。In R.L. DisneyとT.J. Ott (eds.), Applied Probability - Computer Science:The Interface, Vol. I. Birkhauser, 1982, 451-468. IBM T.J. Watson Research Center Report RC-8606にも出ている。
  • [Wilhelm 1977]
    • Neil C. Wilhelm. ディスク・システムの性能のための一般モデル。JACM 24,1 (January 1977), 14-31.
  • [Zahorjan他 1978]
    • J. Zahorjan, J.N.P. Hume, K.C. Sevcik.回転位置センシング・ディスク・システムの待ち行列モデル。INFOR 16,3 (October 1978), 199-216.


10.10.演習」に続きます。