12.5.サービス要求時間:Quantitative System Performance

12.4.センターの記述」の続きです。( 目次はこちら

12.5.サービス要求時間


 待ち行列ネットワーク・モデルのパラメータの値を決定する必要のあるものの最後の集合は、個々のクラスに属する客の個々のセンターでのサービス要求時間である。これらの値を得ることは困難で時間がかかる処理となる可能性がある。実際上の考慮として、最も高く使用しているセンターについて正確な見積もりを得ることに集中することは重要である。というのはボトルネック・センターでのサービス要求時間の見積りにおける小さな誤差は、あまり使用されていないセンターにおけるずっと大きな誤差よりも性能予測に大きく影響を与えるからである。
 サービス要求時間を見積もる際に3つのセンター・タイプ(ディレイ、FESC、キューイング)は異なる仕方で処理される。
 ディレイ・センターは、混雑によって引き起こされたのではない遅れ(例えば通信ネットワークにおける伝達遅れ)を表現するサービス要求時間を持っている。ディレイ・センターについて適切な値を決定することは通常難しくはない。さらに、ディレイ・センターにおけるサービス要求時間の誤差は、モデルが評価される時にキューイング・ディレイ計算によって「拡大」されない。
 FESCについては、第8章で記述したように、負荷依存サービス・レートは多くの仕方で決定出来る。主な2つの方法は(メモリ制約の場合について第9章で示したように)低レベル待ち行列ネットワーク・モデルを評価することと(密結合マルチプロセッサの場合について第11章で示したように)ハードウェアの特性を考慮することである。
 このセクションの残りは、待ち行列ネットワーク・モデル内で間違いなく最も普通のセンター・タイプであるキューイング・センターの場合に充てられる。概念的には、キューイング・センターについてサービス要求時間を見積ることは簡単である。つまり、測定期間の終わりで、個々のデバイスで個々のクラスについて測定されたビジー時間をそのクラスのシステム完了数で割る。しかし実際には2つの困難が発生する。

  • 複数クラスの場合、利用可能なデータはしばしば、測定されたビジー時間を確信を持ってクラス間に割当てるのに不十分である。その理由と救済策はさまざまなデバイスとさまざまなシステムによって異なる。
  • ジー時間の個々のクラスに帰すことの出来る部分はそのクラスに固有である。つまりその基本的な処理とI/O要求時間である。その残りは部分的にはサービス要求時間の水増しから、部分的にはオーバヘッドから成る。第10章で紹介したサービス要求時間の水増しはI/Oサブシステムでの競合による測定されたディスク・ビジー時間の要素である。(プロセッサについてはサービス要求時間の水増しは存在しない。) オーバヘッドはクラスの客「のために」OSによってなされる仕事である。オーバヘッド要素の一部は固定で、そこではそれはシステムの混雑に依存せず(例えば、ユーザI/O動作を開始するのに要求されるCPUサービス時間)、その一部は変動し、通常システム負荷とともに増加する(例、ページングI/O)。ベースライン・モデルにおいてこれらの区別は問題ではないが、修正解析を実行する際、それらは重要になり得る。というのは、サービス要求時間水増しとモデルの変動オーバヘッド要素は通常、新しい環境で変化するからである。

 このセクションはこれら2つの困難のうち最初のもの、つまり、さまざまなクラスに、測定されたビジー時間を割当てること、に充てられる。2番目の困難についての議論は第13章まで延ばされる。しかし読者は、サービス要求時間水増しとサービス要求時間の変動オーバヘッド要素を調整するのに使用する技法は、進化しつつあるシステムについての性能を予測するまで要求されないが、それらは既存システムのベースライン・モデルを用いて数個の測定間隔を調査することによって妥当性を確認されるべきであることを理解すべきである。
 我々の議論は2つのサブセクションに分かれ、最初のものはプロセッサに、2番目のものはI/Oに充てられる。


12.5.1.プロセッサのサービス要求時間の見積り」に続きます。