13.5.1.可変オーバヘッドの変更:Quantitative System Performance

13.5.変更の副次効果」の続きです。( 目次はこちら

13.5.1.可変オーバヘッドの変更


 ほとんど全ての想定されるシステムへの変更は、副次効果として、システム動作で被る可変オーバヘッドを変化させる。多くのシステムでこれの最も目立った例はページングとスワッピングのレートの変化であり、これらはCPUとI/Oの両方の活動を含んでいる。CPUアップグレードやメモリ拡張、負荷強度の増加、クラス間の優先度構造の変化でさえも、この全てがページングとスワッピングの変化という副次効果を持っている。
 前の諸章で記したように、比較的小さな修正(負荷強度の10%増加、CPUキャパシティの25%増加)について性能を予測するためにモデルが使用される場合、可変オーバヘッドの変化は考慮される必要はない。考慮対象の修正がより大きくなればなるほど、これらの変化の数量化を試みることはより重要になる。これは難しい仕事であり、若干の場合は予想する性能の範囲を求めるために感度分析を使用する必要があるだろう。

  1. 数個の観測期間から、望ましくはシステム混雑の程度の範囲を含むように、測定データを得る。
  2. 個々の期間について、個々のセンターのサービス要求時間を決定する。
  3. 最も関心のあるシステム交雑の尺度(例、負荷強度)について、個々のセンターについて、観測されたサービス要求時間を関心のある尺度の関数として単純な曲線をフィットさせる。
  4. 観測していない状況についてサービス要求時間を外挿するために個々のセンターについてこの単純な曲線を用いる。
  • アルゴリズム13.1 単一クラス・モデルにおける可変オーバヘッド

 単一クラス・モデルにおける可変オーバヘッドを数個の観測期間からの測定値に基づいて特徴づける1つの方法はアルゴリズム13.1として与えられる。アルゴリズム13.1内で用いる最も単純な曲線は直線である。これは調査された混雑の範囲が極端でない限り可変オーバヘッドを表すのに充分である。測定値が2つの観測期間で利用可能であり、その期間では負荷強度がそれぞれI^{(1)}I^{(2)}であり、デバイスkでの観測されたサービス要求時間がそれぞれ[D_k^{(1)}]と[D_k^{(2)}]である、と仮定しよう。可変オーバヘッドが負荷強度について線形に増加すると仮定するならば、デバイスkでの新しい負荷強度I'についてのサービス要求時間の適切な見積り値は以下で与えられる。

  • D'=_k=D_k^{(1)}+(I'-I^{(1)})\times\left(\frac{D_k^{(2)}-D_k^{(1)}}{I^{(2)}-I^{(1)}}\right)

可変オーバヘッドの負荷強度に関する依存性をより複雑な曲線で近似することは通常、若干よい精度を与える、特に負荷強度の変化が大きい場合にはそうである、が、これで得られたものは追加された複雑さを正当化しない。複数クラス・モデルでは可変オーバヘッドの注意深い取扱いはより難しい。関係するいくつかの課題がある。

  • 複数クラスの場合、より多くの観測期間が必要である。というのは負荷強度が今度はベクトルであるからである。例えば、もし作業負荷が、会話とバッチの、2つの主要な要素からなるならば、我々は4つの観測期間、すなわち重負荷バッチかつ重負荷会話、重負荷バッチかつ軽負荷会話、軽負荷バッチかつ重負荷会話、軽負荷バッチかつ軽負荷会話、を考察するだろう。
  • 測定ツールの不備のために、個々の観測期間内で、可変オーバヘッドをクラスに正確に帰着させるのは困難である。セクション12.5で説明したような技法を使用することが出来る。
  • 単一クラスの場合にいくつかの点を通る曲線のフィットを呼び出したところでは、C種類のクラスを持つ複数クラスの場合について類似の手続きはC次元面のフィットを呼び出す。しかしそのような複数次元面のフィッティングはこの技法の精度についての他の制約を考慮すると複雑すぎて正当化出来ない。ほとんど全ての場合、一度に1つの作業負荷要素の変更に基づく1次元外挿の繰返しで充分である。


 先の検討から、可変オーバヘッドの変化の見積もりは難しく、高い信頼性で行うことが出来ない。よって性能を予測する際に、オーバヘッドを正確に見積ることの重要性を評価するために、楽観的な仮定と悲観的な仮定の両方の下でモデルを評価することがしばしば適切である。例えば、メモリ・サイズが増加する時、通常、ページングとスワッピングの活動は減少する。この減少の程度を決定するのが困難であるので、我々はモデルを一旦、ページングとスワッピングの活動に変更がないと仮定して評価し、さらに全てのページングとスワッピングの活動が除去されたと仮定して評価するかもしれない。