13.6.1.デュアル・プロセッサへの移行:Quantitative System Performance

13.6.ケーススタディ」の続きです。( 目次はこちら

13.6.1. デュアル・プロセッサへの移行


 1番目のスタディでは、ユニプロセッサ・システム(1100/41)のベースライン・モデルがデュアル・プロセッサ・システム(1100/42)の性能を予測するために修正された。モデルはバッチ・タイプの単一クラスと6個のサービス・センター、1個はCPU(あるいはCPUのペア)を表現し5個はシステムの5つのI/Oチャネルを表している、を含んでいた。ディスクではなくてチャネルを表現するというセンターの使用法は第10章で提案した方法と異なっている。このケーススタディはその方法より前に存在した。さらに、チャネルはこのシステムではディスクよりかなり稼動率が高く、よって性能についての主要な制約であると考えられた。また、ビジー時間の信頼出来る測定はチャネルについては利用可能であったがディスクではそうではなかった。
 このスタディでは6つの異なるベンチマークが使用された。個々のベンチマークをユニプロセッサ・システム上で走らせたのち、測定データはベースライン・モデルのパラメータ値を決めるために、以下のように用いられた。

  • CPUセンターでのサービス要求時間にはCPUビジー時間をジョブ完了数で割ったものを設定した。
  • チャネルを表現している5つのセンターでは、サービス要求時間には対応するチャネル・ビジー時間をジョブ完了数で割ったものを設定した。(このモデルではディスク・サービス時間のシーク要素は表現されていないことに注意しよう。)
  • SIPはマルチプログラミング・レベルの見積り値を提供したが、それは信頼出来ないことが知られていた。よって、Nの値はモデルのスループットがシステムのスループットに厳密に一致するまで調整された。


ベストの結果をもたらすような若干のパラメータの値を決める技法はキャリブレーションと呼ばれている。1つのパラメータの値について本物の不確実性が存在しない限り、これは回避すべきである。
 次にこのベースライン・モデルは2番目のCPUの追加を反映するように修正された。これはCPUセンターをFESCで置き換えることによって実行された。1個の客がいる時、FESCサービス・レートはユニプロセッサのサービス・レートと同じであった。2個以上の客がいる時、それはこの値の2倍であった。つまり、

  • n=1の時
    • \mu(n)=\frac{1}{D_{CPU}}
  • n>1の時
    • \mu(n)=\frac{2}{D_{CPU}}

ただしD_{CPU}はベースライン・モデルにおけるプロセッサ・サービス要求時間である。

  • 表13.1 デュアル・プロセッサへの移行。


 表13.1は6つのベンチマークの各々についてモデルの予測を、2番目のプロセッサを追加した後に測定した性能と比較している。予測したスループットの誤差は6ケースのうち5つで15%以下であった。これは、特に6番目のケースでの38%の不一致を考慮すると成功したと見なすことが出来ない。
 遡及的分析は、CPUアップグレードが平均マルチプログラミング・レベルをかなり、6つのベンチマークのうち4つについてその以前の値の半分まで、低下させていたことを明らかにした。これがたぶん、最初の3つのベンチマークの測定された性能について2番目のプロセッサの追加が基本的に差を引き起こさなかった、という直感に反する事実の理由であった。後知恵の利点をもってでさえ、マルチプログラミング・レベルのこの低下が起きた理由を理解するのは難しかった。(もしかすると、それはシステムのジョブ・スケジューラにおける欠点の兆候だったかもしれない。) 2番目のプロセッサの追加によってマルチプログラミング・レベルが変化しないという仮定は、6つのベンチマークのうちの5つについて予測された楽観的なスループットにおいて大きな役割を演じた。
 楽観的な予測に若干寄与した2番目の要因は、FESCのレートを決定する際に2つのプロセッサ間のインタフェースが考慮されなかったことである。第11章で記したように、2番目のCPUのフルのパワーはデュアル・プロセッサ・システムでは実現出来ない。1より大きなnについて\mu(n)には2/D_{CPU}より小さな値を設定すべきであった。
 最後に、モデルのパラメータの値を修正する際、1ジョブあたりのスワップの回数が変化しないことが期待され、表現された。実際には、1ジョブあたりのスワップ回数は、たぶん、マルチプログラミング・レベルの減少のせいで、減少していた。これは、1ジョブがチャネル1(スワッピング・ドラムの場所)を訪問する回数の平均が減少することを、そしてまた、1訪問あたりの平均サービス時間が減少する(というのは、スワッピング操作はユーザI/O操作よりこのデバイスでの平均サービス時間がずっと長いからである)ことを意味した。この効果は大きくないが、他の楽観的な不一致による補正だけでは十分ではなかった。


13.6.2.ファイル配置の変更」に続きます。