13.6.2.ファイル配置の変更:Quantitative System Performance

13.6.1.デュアル・プロセッサへの移行」の続きです。(目次はこちら

13.6.2. ファイル配置の変更


 2番目のケーススタディは、ユーザ・ファイルの配置を変えることによるチャネル間の負荷バランスの効果の調査である。このスタディの時点までに、構成は若干、発展している。特に、ディスク・チャネルは「デュアル・チャネル」にコンバートされた。同一のデュアル・チャネル上の2つのディスクが同時にアクティブ(どの局面でも、データ転送であっても)になり得る。よって2つのスタディの性能尺度は直接には比較出来ない。
 利用したモデルは1番目のスタディで用いたモデルと類似していた。もう一度、バッチ・タイプの単一クラスが存在した。UNIVAC 1100/42構成のデュアル・プロセッサをモデル化するためにやはり、FESCが用いられた。モデル内の他のセンターはチャネルに対応した。デュアル・チャネルのおののは、デュアル・プロセッサCPUを表現するのに用いたFESCと類似した振る舞いを持つFESCとしてモデル化された。
 1回のベンチマークが、ユーザ・ファイルのデバイスへの元々の割当てを持つシステム上で流された。ベースライン・モデルのパラメータの値を決定するためにSIPとUNIVAC IOTRACEの両方からのデータが使用された。(IOTRACEは個々のファイルのアクセスによるチャネルのビジー時間を報告した。) モデル・パラメータの大部分は従来の方法で決められた。しかし、デュアル・チャネルを表現するセンターは特別な注意を要求した。1組のうちの1つのチャネルはプライマリであり、使用可能な時はいつでも使用された。もう一方はセカンダリであり、必要な時だけ使用された。個々のFESCのサービス・レートは以下のように計算された。

  • n=1の時
    • \mu(n)=\frac{C_{prim}}{B_{prim}}
  • n>1 の時
    • \mu(n)=\frac{C_{prim}}{B_{prim}}+\frac{C_{sec}}{B_{sec}}

ただしprimsecは1組のうちのプライマリとセカンダリを示し、C_kはチャネル kで測定された操作の数であり、B_kは測定されたチャネルkのビジー時間である。(セカンダリ・チャネルが処理する要求がもしプライマリ・チャネルが処理する要求と同じディスクをたまたまアクセスするならば、セカンダリ・チャネルはブロックされるという事実をこの計算は無視していることに注意。) やはりスループットを調整することによってマルチプログラミング・レベルNを決定することが必要であった。
 ユーザ・ファイルは測定されたI/Oアクセスの30%しか締めていなかった。他の70%のアクセスは、この実験ではその位置が固定されていると考えられていたシステム・ファイルに対してであった。ユーザ・ファイルの既存の配置における2つの変更が考察された。

  • 全てのユーザ・ファイルをチャネル4に接続された8433ディスク上に置く。注意深い分析が、これが最も大きな性能改善をもたらすだろうと示唆した。「ベストケース・シナリオ」
  • 全てのユーザ・ファイルを最も集中して利用しているチャネルにつながったデバイス上に置く。これが最も大きな性能悪化をもたらすだろうと信じられていた。比較のために含めた「ワーストケース」

ベースライン・モデルのパラメータは、この章の以前のところで提案したのと似た技法を用いて、これらのファイル配置の各々を表現するように調整された。個々のケースについてモデル予測が得られたのち、ファイルは実際に移動されて、個々のケースについてベンチマークが再び流された。

  • 表13.2 ファイル配置の変更


 両方のケースの結果を表13.2に示す。最後の欄は観測値に対する予測の誤差を示している。結果は、ユーザ・ファイルのベストな配置におけるスループットが(ユーザ・ファイルはI/Oアクセスの30%だけを占めているのであるが)既存の配置より約5%大きく、ワーストな配置より35%大きい。ベストの配置のモデルの精度は極めて良いが、ワーストな配置についてはそれは受入れ可能であるが良くはない。
 顧みると、誤差の大きな原因は、ファイル配置の変更に伴うスワッピング動作の変化をモデルが無視しているという事実であった。ワーストケースのシナリオは、多くのユーザ・ファイルを、スワップ・データセットを含むドラム上に配置することを引き起こした。スワップ操作が長くなり、CPUはより頻繁にアイドルになり(というのはスワップ中にはジョブはサービスを利用可能ではなかったから)、スケジューラはCPUをビジーに保とうとしてより多くのジョブをアクティブにし、スワッピング(と関係するチャネル混雑)は増加した。モデルはスワッピングに影響を与えないと仮定していたが、これは性能の悪化を過少評価した。(ベストな配置は若干のファイルをスワッピング・ドラムから取り除き、スワッピングの若干の削減をもたらしたが、その効果はそれほど大きくはなかった。)


13.6.3.ドラムからディスクへのスワッピング動作の移動」に続きます。