16.4.まとめ:Quantitative System Performance

16.3.3.予想される変化の反映(2)」の続きです。(目次はこちら

16.4.まとめ


 待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアは4つの層から成ると見ることが出来る。それらは下から上に、

  1. 中核計算ルーチン。これはパートIIで記述したように分離可能待ち行列ネットワーク・モデルを評価する。
  2. 近似変形。これは中核ルーチンとやりとりして、パートIIIで記述したようにメモリやディスクI/O、プロセッサといったサブシステムの詳細な、非分離可能モデルを評価する。
  3. ユーザ・インタフェース。これはユーザが待ち行列ネットワークの用語ではなくてコンピュータ・システムの用語を用いることを可能にし、またモデル定義の保存や検索、出力レポート、ソフトウェアのプログラム可能性といったファシリティをもサポートする。
  4. 高レベル・フロントエンド。これはパートIVで記述した特定の作業を部分的に自動化する。つまり、システムの測定データから待ち行列ネットワーク・モデルの入力を生成し、提案するシステムの性能を予測するのに必要なシステム仕様を繰返し評価する、などである。


これらの層の全てが存在する必要はない。確かに、単純な待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアはしばしば最初の層だけから成る。しかしより高い層はプロのコンピュータ・システム性能解析者にとって重要である。4つの層が1個のソフトウェアに一緒に組み込まれる必要はない。4番目の層は他の3つから分離しているのが普通である。
 発生する明白な疑問は、待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアは、この本のような情報源からの情報を用いて自作すべきか、あるいはベンダから入手すべきか、ということである。大部分の議論は後者の選択を支持している。これらの議論の多くは経営上のものであるが、ひとつは技術的なものであり、我々はそれを手短かに考察しよう。
 近年、待ち行列ネットワーク・モデル化技術は迅速に進んで来ており、ここしばらくはそれが続くと予想される。コンピュータ・システム解析者の、コンピュータ・システムの解析に充てられない部分の時間は、待ち行列ネットワーク技術における進歩について状況を常に把握しておくよりもコンピュータ・システムにおける進歩について状況を常に把握しておくことによりよく費やされる。
 この点を支持する短い歴史の振り返りは興味深いであろう。表16.2は、中核計算ルーチンの比較的よく分かっている層においてさえも、進歩が最近であり、迅速であり顕著であることを示している。近似変形の層では、進歩はより最近でさえある。例えば複数クラス・メモリ制約待ち行列ネットワークのための技法(セクション9.3)とマルチパス化I/Oサブシステムのための技法(セクション10.5)の両方はこの本の2年の計画期間の間に開発された。言い換えれば、待ち行列ネットワーク・モデル化ソフトウェアの低い層でのアルゴリズムにおいてさえ大きな変化が最近起きている。

  • 表16.2 中核計算ルーチンにおける進歩


16.5.エピローグ」に続きます。