不定個の同一分布独立確率変数の和の分散

不定個の同一分布独立確率変数の和の平均」での考え方を応用して、今度は分散を計算してみます。


同じ分布を持つ独立な確率変数がN個あり、それらをX_k(ただし1{\le}k{\le}N)で表すことにします。また、N自身も確率変数であるとします。これらの確率変数の和を考え、それをYで表します。つまり

  • Y=\Bigsum_{k=1}^NX_k・・・・(1)

です。
分散V[Y]は、

  • V[Y]=E[Y^2]-E[Y]^2・・・・(2)

ここで「[不定個の同一分布独立確率変数の和の平均]」の式(6)(ここでは式(3)に番号を振り直します)

  • E[Y]=E[E[Y|N] ]・・・・(3)

を応用すれば

  • E[Y^2]=E[E[Y^2|N] ]・・・・(4)

ここでまずN=nの時のE[Y^2|N]を計算します。つまりE[Y^2|N=n]を計算します。

  • E[Y^2|N=n]=E[(\Bigsum_{k=1}^nX_k)^2]=E[\Bigsum_{k=1}^nX_k^2+\Bigsum_{k=1}^n\Bigsum_{j{\neq}k}^nX_kX_j]
    • =\Bigsum_{k=1}^nE[X_k^2]+\Bigsum_{k=1}^n\Bigsum_{j{\neq}k}^nE[X_kX_j]=\Bigsum_{k=1}^nE[X_k^2]+\Bigsum_{k=1}^n\Bigsum_{j{\neq}k}^nE[X_k][X_j]
    • =nE[X^2]+n(n-1)E[X]^2

よって

  • E[Y^2|N=n]=nE[X^2]+n(n-1)E[X]^2・・・・(5)

式(5)を式(4)に代入して

  • E[Y^2]=E[NE[X^2]+N(N-1)E[X]^2]
    • =E[NE[X^2]]+E[N(N-1)E[X]^2]
    • =E[N]E[X^2]+E[N(N-1)]E[X]^2
    • =E[N]E[X^2]+(E[N^2]-E[N])E[X]^2
    • =E[N]E[X^2]+E[N^2]E[X]^2-E[N]E[X]^2

よって

  • E[Y^2]=E[N]E[X^2]+E[N^2]E[X]^2-E[N]E[X]^2・・・・(6)

一方、式(2)の右辺の2番目の項E[Y]^2は「不定個の同一分布独立確率変数の和の平均」の式(7)

  • E[Y]=E[X]E[N]・・・・(7)

を用いればよいので、式(2)に式(6)と式(7)を代入すると

  • V[Y]=E[N]E[X^2]+E[N^2]E[X]^2-E[N]E[X]^2-E[X]^2E[N]^2
    • =E[N](E[X^2]-E[X]^2)+(E[N^2]-E[N]^2)E[X]^2
    • =E[N]V[X]+V[N]E[X]^2

よって

  • V[Y]=E[N]V[X]+V[N]E[X]^2・・・・(8)

となります。