M/M/s/n待ち行列(1)

M/M/1/n待ち行列(4)」の続きです。

では今度は、ステーションが1つ、ステーションを構成する装置がs台、ジョブの到着時間間隔の分布が指数分布、装置の処理時間の分布も指数分布、ステーション内にはジョブn個までしか入らない場合の、この待ち行列の挙動を調べていきます。大体の流れは、「M/M/1/n待ち行列(1)」の場合と同じです。


ステーション内にジョブk個ある確率をp(k)で示します。また、ステーション内にジョブk個ある状態を「状態k」と呼ぶことにします。装置の処理時間の平均をt_eで示します。ジョブの平均到着時間間隔をt_aで示します。ここで

  • u=\frac{t_e}{st_a}

という数を考えます。すると

  • t_a=\frac{t_e}{su}・・・・(1)

になります。任意のある時刻tからt+dtの間に処理が完了する確率は(どの装置の処理完了であるかは問わない)、今の状態が状態kであるとすると、

  • 0{\le}k{\le}sの場合は
    • \frac{k}{t_e}dt・・・・(2)
  • k{\ge}sの場合は
    • \frac{s}{t_e}dt・・・・(3)

となります。同様に、任意のある時刻tからt+dtの間にジョブが到着する確率は

  • \frac{su}{t_e}dt・・・・(4)

となります。
状態0を考えます。この状態から別の状態に変化する遷移は、ジョブの到着による、状態0→状態1、の遷移のみです。また、別の状態からこの状態に変化する遷移は、ジョブの処理完了による、状態1→状態0、の遷移のみです。

定常状態ではこの状態0から出て行く流れと状態0に入って行く流れが等しいはずです。出て行く流れ、つまりtからt+dtの間に状態0→状態1の遷移が発生する確率は式(4)から

  • p(0)\frac{su}{t_e}dt・・・・(5)

になります。一方、入って行く流れ、つまりtからt+dtの間に状態1→状態0の遷移が発生する確率は式(2)から

  • p(1)\frac{1}{t_e}dt・・・・(6)

になります。式(5)と(6)が等しいわけですから

  • p(0)\frac{su}{t_e}dt=p(1)\frac{1}{t_e}dt

よって

  • p(0)su=p(1)

よって

  • p(1)=sup(0)・・・・(7)

となります。
次に状態0と状態1をひとまとめに考え、状態2以上をひとまとめに考えます。この2つのグループの間の流れを考えます。状態0と状態1のグループをA、状態2以上のグループBとします。

AからBへの遷移が発生する確率は、式(5)と同様に考えれば

  • p(1)\frac{su}{t_e}dt・・・・(8)

であることが分かります。次にBからAへの遷移が発生する確率は、今度は状態2では装置が2台処理中であることを考慮して式(2)を考慮すれば

  • p(2)\frac{2}{t_e}dt・・・・(9)

になります。式(8)と(9)が等しいわけですから

  • p(1)\frac{su}{t_e}dt=p(2)\frac{2}{t_e}dt

よって

  • p(1)su=2p(2)

よって

  • p(2)=\frac{su}{2}p(1)・・・・(10)

となります。ここで式(7)を考え直してみれば式(7)は

  • p(1)=\frac{su}{1}p(0)・・・・(11)

とみなすことが出来ることが分かります。これを拡張していけば、

  • 1{\le}k{\le}sの時
    • p(k)=\frac{su}{k}p(k-1)・・・・(12)

となることが分かります。さらに、式(12)を繰り返し適用していくことで

  • 0{\le}k{\le}sの時
    • p(k)=\frac{(su)^k}{k!}p(0)・・・・(13)

になることが分かります。式(13)でk=sとすると

  • p(s)=\frac{(su)^s}{s!}p(0)・・・・(14)

です。


今度はk>sの場合を考えてみましょう。先ほどと同様に考えます。

今度は状態kであっても処理中の装置はk台ではなくs台であることが異なっています。よってAからBへの遷移が発生する確率は、式(5)と同様

  • p(k-1)\frac{su}{t_e}dt・・・・(15)

ですが、BからAへの遷移が発生する確率は、装置がs台処理中であることに注意して

  • p(k)\frac{s}{t_e}dt・・・・(16)

になります。式(15)と(16)が等しいわけですから

  • p(k-1)\frac{su}{t_e}dt=p(k)\frac{s}{t_e}dt

よって

  • p(k-1)u=p(k)

よって

  • k>sの時
    • p(k)=up(k-1)・・・・(17)

となります。k=s-1の時から繰り返し式(17)を適用することで

  • k>sの時
    • p(k)=u^{k-s}p(s)・・・・(18)

を導くことが出来ます。さらに式(14)を代入すれば

  • k>sの時
    • p(k)=u^k\frac{s^s}{s!}p(0)・・・・(19)

となります。よって

  • 0{\le}k{\le}sの時
    • p(k)=\frac{(su)^k}{k!}p(0)・・・・(13)
  • k>sの時
    • p(k)=u^k\frac{s^s}{s!}p(0)・・・・(19)

となります。


M/M/s/n待ち行列(2)」に続きます。