D/M/s待ち行列の平均待ち時間を求めて(2)

D/M/s待ち行列の平均待ち時間を求めて(1)」の最後で、式(11)

  • \Pi_{(D/M/s)}{\approx}\Pi_{(M/D/s)}・・・・(11)

が成り立つかどうかを問題にしました。
これは実は成り立ちません。s=1の場合がすでに反例になっています。M/D/1待ち行列では到着過程がポアソン過程なのでPASTAを適用することが出来、ジョブの到着時に全ての装置が(といってもs=1なので1台の装置が、ということになります)処理中である確率は、装置が処理中である時間平均であるuに等しくなります。つまり

  • \Pi_{(M/D/1)}=u・・・・(12)

です。しかし、D/M/1待ち行列では到着過程がポアソン過程ではないのでPASTAを適用することが出来ません。ジョブの到着時に装置が処理中であるのをそのジョブが見る確率は、「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(3)」のグラフにありますようにuより小さい値になります。よって\Pi_{(D/M/1)}は近似的にも\Pi_{(M/D/1)}に等しくありません。よって上の式(11)は成り立ちません。よって、「D/M/s待ち行列の平均待ち時間を求めて(1)」で述べた方法では

  • CT_{q(D/M/s)}{\approx}CT_{q(M/D/s)}・・・・(3)

を言うことは出来ません。


D/M/s待ち行列の平均待ち時間を求めて(1)」の内容を見直してみると式(8)

  • CT_{q(D/M/1,t_e/s)}=u\hat{CT}_{q(D/M/1,t_e/s)}・・・・(8)

も正しくないことが分かります。正確には

  • CT_{q(D/M/1,t_e/s)}=\Pi_{(D/M/1)}\hat{CT}_{q(D/M/1,t_e/s)}・・・・(14)

と書くべきです。つまり

  • \Pi_{(D/M/1)}{\neq}u・・・・(15)

であることに注意しなければなりません。このことに注意してもう一度検討してみましょう。


まず

  • \hat{CT}_{q(D/M/s,t_e)}=\hat{CT}_{q(D/M/1,t_e/s)}・・・・(6)
  • CT_{q(D/M/s,t_e)}=\Pi_{(D/M/s)}\hat{CT}_{q(D/M/s,t_e)}・・・・(7)

でした。さらに

  • CT_{q(D/M/1,t_e/s)}=\Pi_{(D/M/1)}\hat{CT}_{q(D/M/1,t_e/s)}・・・・(14)

でした。式(6)(7)(14)から

  • CT_{q(D/M/s,t_e)}= \frac{\Pi_{(D/M/s)}}{ \Pi_{(D/M/1)}}CT_{q(D/M/1,t_e/s)}・・・・(15)

となります。さらに、式(5)

  • CT_{q(M/D/1)}{\approx}CT_{q(D/M/1)}・・・・(5)

を用いると

  • CT_{q(D/M/s,t_e)}{\approx}\frac{\Pi_{(D/M/s)}}{\Pi_{(D/M/1)}}CT_{q(M/D/1,t_e/s)}・・・・(16)

となります。


そこで、もし

  •  \frac{\Pi_{(D/M/s)}}{\Pi_{(D/M/1)}}{\approx}\frac{\Pi_{(M/M/s)}}{u }・・・・(17)

をいうことが出来れば、

  • CT_{q(D/M/s)}{\approx}CT_{q(M/D/s)}・・・・(3)

をいうことが出来そうです。


しかしその前に、そもそも

  • \Pi_{(M/D/s)}{\approx}\Pi_{(M/M/s)}・・・・(18)

は、なぜ成り立つのか、それを探求すべきなのかもしれません。