QNAに対する疑問
Manufacturing Systems Modeling and Analysis
Manufacturing Systems Modeling and Analysis
- 作者: Guy L. Curry,Richard M. Feldman
- 出版社/メーカー: Springer Berlin Heidelberg
- 発売日: 2009/03
- メディア: ペーパーバック
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の第5章を今、勉強しているのですが、ここに来て私はWord Whitt教授のQNA(Queueing Network Analyzer)の手法に対する疑問というか疑念が育ちつつあります。これを私は「工場統計力学」の中心の1つに据えようと考えていたので私にとって事態は結構、深刻です。疑念は以下の2つです。
疑念1
- QNAで中心的役割を果たすGI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式*1
- は、再生過程(=到着間隔の分布が互いに独立で同一であるような過程)の到着過程を前提にしているが、ステーションからのジョブの出発過程は一般には再生過程にはならない*2。ということはそのステーションの次工程に位置するステーションへの到着過程は再生過程ではないことになり、GI/G/sの近似式を適用することに疑念が生ずる。この式自体がすでに近似式である上にこの近似式の仮定の1つをやぶるわけなので、これでどの程度の精度が言えるのか、疑問である。
疑念2
- さらに、あるステーション(ステーションAと呼ぶことにする)の前工程のステーションが複数ある場合、それら前工程のステーションからやってくるジョブの流れを重ね合わせたものをステーションAへの到着過程を考える必要がある。QNAではその到着過程を再生過程とみなして、その到着間隔の変動係数を近似的に計算しているが、複数の再生過程の重ね合わせは一般には再生過程にはならない*3。疑念1で述べたように前工程からの出発過程がそもそも再生過程でないのに、それを再生過程とみなし、さらにその重ね合わせがあたかも再生過程であるように考えるのであるから、その精度についてはますます疑問符がついてしまう。
このようなことからQNAを用いた工場モデルの挙動について、あまり精度を云々することは出来ないのではないか、と思い始めています。定性的な話にとどめておいたほうがよいのでは・・・と。
QNAを他人に説明する際、その根拠を私は正当化出来ないでいます。自分が正当化出来ないものを他人に説明することは難しいです。
かといって工場のような一般的な待ち行列ネットワークの挙動を明らかにしてくれるような他の理論を私は知りません。今読んでいるManufacturing Systems Modeling and AnalysisもQNAを基礎としています。
う〜ん、困った、困った・・・・。