再生過程の重ね合わせの変動係数の計算について
Manufacturing Systems Modeling and Analysis
Manufacturing Systems Modeling and Analysis
- 作者: Guy L. Curry,Richard M. Feldman
- 出版社/メーカー: Springer Berlin Heidelberg
- 発売日: 2009/03
- メディア: ペーパーバック
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では再生過程を重ね合わせた過程の到着間隔の変動係数の計算をQNAより簡単な方法で行っています。理由はQNAが提案する方法では計算が複雑だから、ということです。もちろんManufacturing Systems Modeling and Analysisでも、この簡略化した方法はより精度が落ちることは認めています。どんな時にこの簡略化が正当化出来るか、ちょっと検討してみました。
まず、重ね合わせを構成する個の再生過程の各々に1からまでの番号を振り、番の再生過程の到着レートを、変動係数をで表します。重ね合わせた過程の到着レートを、変動係数をで表します。そうすると近似でも何でもなくて、明らかに
です。
2乗変動係数についてはManufacturing Systems Modeling and Analysisでは
- ・・・・(1)
で計算することを提案しています。つまり個々の再生過程の変動係数の到着レートによる加重平均として計算するものです。
ところがQNAで提案しているのはもっと複雑な式でして(「QNA読解:4.3 重ね合わせ(1)」「(2)」参照)
- ・・・・(2)
ただし
- ・・・・(3)
- ・・・・(4)
です。ここではこの重ね合わされた到着過程を受け取るステーションの装置の稼働率です。再生過程の重ね合わせですから本来ならは無関係なはずなのですが、Whitt教授のグループはいわば待ち行列の平均待ち時間を多数のシミュレーションで実施して、このような式を得たのでした。再生過程の重ね合わせは本当は再生過程ではないことに対する補正をここに見るべきなのでしょう*1。
さて、一般に[tex:0
です。すると式(4)は以下のようになります。
つまり、が大きければは大きくなります。ということは多数の再生過程の重ね合わせの場合が大きくなるということです。が大きくなればは1より小さくなり、式(1)の結果は式(2)の結果から大きくはずれることになります。どういうふうにはずれるのでしょうか?
式(2)を見れば分かるようにはより1に近づくことになります。つまりよりポアソン過程に近くなるわけです。このことは確かに正しいのですが、式(1)ではその考慮がなされていません。式(1)では、
となっては各再生過程の二乗変動係数の平均になります。特に全ての再生過程で変動係数が等しい場合、つまりならば
つまり
になります。式(2)のようにが大きくなった時にが1に近づく、ということはありません。