M/G/sの待ち確率Πの近似(2)

M/G/sの待ち確率Πの近似(1)」の続きです。
もうひとつのヒントは
http://www-optima.amp.i.kyoto-u.ac.jp/~takine/tmp/shiryou.pdf

  • 滝根哲哉氏*1の「確率離散事象論講義資料」平成16年4月8日

です。この中の以下の箇所を見た時に、何かある、と感じました。

3.2.2 M/M/∞


 無限個のサーバをもつ待ち行列M/M/\inftyを考える。サーバ数が無限であるので、到着した客は待たされることなく直ちにサービスを受けることができる。無限サーバ待ち行列はシステム内での客の振舞いが互いに独立と見なせる場合をモデル化したものであり、例えば、ある地域内でインターネットに接続中の人数をマクロな視点でモデル化する際に利用できる。


 M/M/cと同様の議論によりM/M/\inftyの系内客数L(t)\lambda_k=\lambda (k=0,1,...)\mu_k=k\mu_k k=(1,2,...)の出生死滅過程となる。図12にM/M/\inftyの状態遷移速度図を示す。

  • 図12:M/M/∞の状態遷移速度図


 式(20)の右辺は常に有限の値に収束するので、定理6より、M/M/\inftyは常に安定で定常状態が存在する。さらに定常状態確率p_k

  • p_k=e^{-\rho}\frac{\rho^k}{k!} k=0,1,...   (23)

で与えられ、平均\rhoをもつポワソン分布となる。



 なお、式(23)はサービス時間の平均が1/\muであるような全てのM/G/\inftyに対しても成立する。このように、サービス時間分布に関して、その平均値のみで系内客数の確率分布が定まる性質をサービス時間分布に関する不感性(insensitivity)という。

まず、式(23)から

  • p_{k+1}=\frac{\rho}{k+1}p_k

が言えます。私の書き方では

  • p(k+1)=\frac{\rho}{k+1}p(k)

です。ここでの\rhoは「M/G/sの待ち確率Πの近似(1)」での\rhoとは意味が違い、「M/G/sの待ち確率Πの近似(1)」での表記法によれば

  • s{\rho}

私の表記法では

  • su

になるものです。ただ今はs=\inftyですからsとかuとかを単独で用いるわけにはいかず、\rhoで表現しているのでした。
これらのことを考えると式(23)から

  • p(k+1)=\frac{su}{k+1}p(k)・・・・(1)

を導くことが出来ます。これは上の図12から、

  • p(k+1)(k+1)\mu={\lambda}p(k)

が成り立ち、よって

  • p(k+1)=\frac{\lambda}{(k+1)\mu}p(k)

が成り立ちますが、定義から

  • \frac{\lambda}{\mu}=su

なので式(1)が成り立ちます。そして重要なことは、M/M/sの場合でも[tex:k*2氏の「待ち行列におけるある近似の試み――経済学研究42-3 北海道大学 1992.12」の一節

(i)L{\le}sのときにはM/G/\infty、(ii)L>sのときにはM/G/1を適用

に思い当たります。さらに上の「確率離散事象論講義資料」の引用でもう一つ重要な記述は

 なお、式(23)はサービス時間の平均が1/\muであるような全てのM/G/\inftyに対しても成立する。

という記述です。であれば、どんなM/G/sについても[tex:k

*1:大阪大学大学院教授。ホームページはここ

*2:北海道大学大学院教授