クローズド・ネットワークまとめ

クローズド・ネットワークのスループットとサイクルタイムの関係を求める試みは、私の力量では残念ながらここでストップしてしまいます。つまり、「クローズド・ジャクソン・ネットワークのサイクルタイムの求め方(1)(4)」までが到達点です。工場内にステーションがいくつあってもよい。ステーション内に装置が何台あってもよい。ラウティングは分岐していても合流していてもよい。また、同じステーションを複数回通過するラウティングであってもよい。しかし、装置の処理時間は全て指数分布で分布しなければならないという制約があります。この制約は、実際の工場の挙動を計算しようとする際に大きな障害になります。
Manufacturing Systems Modeling and Analysis

には一般の処理時間分布を扱うことが可能な近似方法が載っていますが、その精度はあまりよくないとのことです。



この事実は、工場統計力学を建設しようとするのに大きな障害になります。CONWIPではなくプッシュの運用方針であれば、Word Whitt教授のQNAの手法を用いて、一般の処理時間分布の場合の工場の挙動(例えばスループットとサイクルタイムの関係)を近似的に計算することが可能ですが、CONWIP方針を採用した工場の挙動を計算しようとした場合、工場内の全ての装置の処理時間分布が指数分布の時のみしか計算出来ないのです。これでは、CONWIPやTOCサイクルタイムはより短く、スループットはより多くすることに効果があることを、ジャクソン・ネットワークを用いて例示することは出来ますが、実際の工場において工場統計力学が予言出来ることがほとんどないことになります。
これは非常に残念なことです。