GI/G/s待ち行列の定常状態分布を求めて(3)

GI/G/s待ち行列の定常状態分布を求めて(2)」の最後で私は

  • \Omega_{GI/G/s}{\approx}\Pi_{M/M/s}・・・・(19)

を言うことが出来ればCT_qの近似式を得ることが出来るのですが、式(19)が言えるのかどうか、今の私には分かりません。

と書いたのですが、その後、上の式(19)は一般には成り立たないことが分かりました。それを示すにはD/D/s待ち行列を考えればよいです。
D/D/sはもちろんGI/G/sの一種です。そして、D/D/s待ち行列で、任意の時刻に全ての装置が処理中である確率\Omega_{D/D/s}は次のようにして考えれば、求めることが出来ます。まず、例としてD/D/3待ち行列を考えてみます。もし、稼働率uu=2/3であるならば、3台の装置の処理状態を示すガントチャートは以下のようになります。

上の図で水色のところが処理中の時間を示しています。これを注意深く見ると、下のパターンの繰り返しであることが分かります。

上の図を見ると3台の装置が全て処理中である時刻はまったく存在しないことが分かります。つまりu=2/3の時、\Omega_{D/D/3}=0です。次にu2/3よりも小さかったとしましょう。その場合に上と同じような図を描いてみると下の図になります。

この場合も3台の装置が全て処理中であるような瞬間はありません。よってu{\le}2/3の時、\Omega_{D/D/3}=0であることが分かります。次にu>2/3の場合を考えます。今度は図は以下のようになります。

この場合、3台の装置が同時に処理中である瞬間があります。全体の時間に対する3台の装置が同時に処理中である時間の割合は、図をよく見て考えると

  • (u-2/3)*3=3u-2

であることが分かります。つまり、u>2/3の時

  • \Omega_{D/D/3}=3u-2

です。これらのことをまとめて書くと

  • \Omega_{D/D/3}=\max(3u-2,0)・・・・(20)

となります。これをグラフに表すと

となります。これは明らかに\Pi_{M/M/3}とは異なります。\Omega_{D/D/3}\Pi_{M/M/3}のグラフを重ねてみると以下のようになります。

よって式(19)は成り立ちません。