GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(2)

まず、Page*1によれば

  • CT_q(GI/G/s){\approx}c_a^2c_e^2CT_q(M/M/s)+c_a^2(1-c_e^2)CT_q(M/D/s)+c_e^2(1-c_a^2)CT_q(D/M/s)・・・・(2)

が成り立つということです。これは数多くの数値計算の結果から導かれたそうです。これを基本にしていきます。
次にリー・ロントンの近似式

  • CT_q(M/D/s){\approx}\frac{1}{2}CT_q(M/M/s)・・・・(3)

を用います。リー・ロントンの近似式が成り立つ理由については「リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(1)(10)」に記しました。「リー・ロントンの近似式を根拠づける試み(10)」の式(11)が上の式(3)になっております。式(3)を式(2)に代入すると

  • CT_q(GI/G/s){\approx}c_a^2c_e^2CT_q(M/M/s)+c_a^2(1-c_e^2)\frac{1}{2}CT_q(M/M/s)+c_e^2(1-c_a^2)CT_q(D/M/s)
    • =\frac{2c_a^2c_e^2+c_a^2-c_a^2c_e^2}{2}CT_q(M/M/s)+c_e^2(1-c_a^2)CT_q(D/M/s)
    • =\frac{c_a^2(1+c_e^2)}{2}CT_q(M/M/s)+c_e^2(1-c_a^2)CT_q(D/M/s)

よって

  • CT_q(GI/G/s){\approx}\frac{c_a^2(1+c_e^2)}{2}CT_q(M/M/s)+c_e^2(1-c_a^2)CT_q(D/M/s)・・・・(4)

この式の右辺のうち、CT_q(M/M/s)はすでに分かっています。つまりこれは「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(1)(3)」で示したように

  • CT_q(M/M/s)=\frac{s^{s-1}u^s}{s!(1-u)^2}p_0t_e・・・・(5)
  • ただし
    • p_0=\frac{1}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(6)

です。ですから、あとCT_q(D/M/s)を表す数式が分かれば式(4)を使ってGI/G/s待ち行列の平均待ち時間CT_q(GI/G/s)の近似式を導くことが出来ます。よって次の目標はCT_q(GI/G/s)の近似式を求めることです。
その前に式(5)を今後の導出に便利なように変形しておきます。「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」に示すようにM/M/s待ち行列において、システム内にジョブがk個存在する確率p(k)

  • [tex:0{\le}k
    • p(k)=\frac{(su)^k}{k!}p_0・・・・(7)
  • k{\ge}sの時
    • p(k)=\frac{(su)^s}{s!}u^{k-s}p_0・・・・(8)

です。一方、待ち確率(ジョブが到着した時に全ての装置が処理中であるのを見る確率)を\Pi(M/M/s)で表すと、到着過程がポアソン過程であるためPASTAが成立し、到着時の確率と時間平均での確率が等しくなるので

  • \Pi(M/M/s)=\Bigsum_{k=s}^{\infty}p(k)・・・・(9)

で計算することが出来ます。式(9)に式(8)を代入して

  • \Pi(M/M/s)=\Bigsum_{k=s}^{\infty}\frac{(su)^s}{s!}u^{k-s}p_0=\frac{(su)^s}{s!}p_0\Bigsum_{k=s}^{\infty}u^{k-s}
    • =\frac{(su)^s}{s!}p_0\Bigsum_{k=0}^{\infty}u^k=\frac{(su)^s}{s!}p_0\frac{1}{1-u}
    • =\frac{(su)^s}{s!(1-u)}p_0

つまり

  • \Pi(M/M/s)=\frac{(su)^s}{s!(1-u)}p_0・・・・(10)

になります。式(10)を式(5)の右辺に用いると

  • CT_q(M/M/s)=\frac{\Pi(M/M/s)}{s(1-u)}t_e・・・・(11)

と表すことが出来ます。

*1:Page, E. S. (1972), Queueing Theory in OR