さて、今度はD/M/sの平均待ち時間を表す数式を(それが近似式であっても)求めることが目標になります。これについて私はいろいろ試みたのですが、うまくいきませんでした。そこで代わりにの平均待ち時間ならば状態遷移図を描くことで求めることが出来るのではないか、と思い、を求めることにしました。からを求めるには次のようにします。
また、Pageの近似式
- ・・・・(2)
を用います。左辺をに適用すると、、なので
- ・・・・(12)
よって
- ・・・・(13)
式(13)によってからを(近似的に)求めることが出来ます。
次にを求めることを考えます。まずの場合、つまりを考えます。待ち行列の状態を、到着ジョブのフェーズと待ち行列内のジョブ数の組で表すことにします。ジョブの到着は、フェーズ0とフェーズ1の2段階を経て発生すると考えます。ジョブ到着間隔の平均は、装置が2台あることに注意すれば
- ・・・・(14)
です。そこでフェーズ0もフェーズ1も、その状態に滞在する時間が平均
- ・・・・(15)
の指数分布になっているとすれば、ジョブの到着間隔は平均
- ・・・・(14)
の2次のアーラン分布になります。このようにすると、待ち行列の状態遷移は以下の図のようになります。
図の各楕円が状態を表し、楕円の中の2つの数字は、最初のものが到着過程のフェーズを、2番目のものが待ち行列システム内のジョブ数を表しています。また、楕円と楕円を結ぶ矢印につけられた数式は、時間間隔にその遷移が起こる確率密度を表しています。定常状態を求めるためには各遷移の確率密度の比だけが重要なので図1の確率密度の全てにをかけて、図を下のように簡単にします。
ここから平衡方程式を立てると以下のようになります。なお、以下の式では状態(n,m)の定常状態確率を表します。
- ・・・・(16)
- ・・・・(17)
- ・・・・(18)
- ・・・・(19)
- ・・・・(20)
- ・・・・(21)
- ・・・・・・・
ところが、この連立一次方程式は簡単に解くことが出来ません。無限に一次方程式が存在するので、解くためにはシステム内のジョブ数が大きい状態の定常状態確率を無視してゼロとおいて、有限個の連立一次方程式にする必要があります。しかし、が1に近くなると無視した状態の確率も無視出来なくなるので、この方法で定常状態確率を求めるのも考えものです。定常状態確率を求める理由は、それを用いてを求めたいからでした。そこで作戦を変えて、全ての定常状態確率を求めることなくを求める方法を考えてみます。