GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(4)
「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(3)」の続きです。
ここで用いるのはGI/M/sとGI/M/1の平均待ち時間の関係です。つまり、との関係です。この関係を以下のようにして求めます。
「GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(17)(ここでは番号を振り直して式(22)とします)によれば、の時、時間平均の確率でシステム内にジョブが個ある確率は
- ただし・・・・(22)
で表されます。ただし、は、到着したジョブが全ての装置が処理中であるのを見る確率です。これを用いて、平均待ちジョブ数を求めます。
- ・・・・(23)
なので、これに式(22)を代入すると
ここで「補足」の式(2)(ここでは番号を振り直して式(24)とします)
- ・・・・(24)
を用いれば
よって
- ・・・・(25)
ここで平均待ち時間を求めるためにリトルの法則を用いると、スループットはなので
- ・・・・(26)
となります。式(26)に式(25)を代入して
よって
- ・・・・(27)
ところで「GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(11)(ここでは番号を振り直して式(28)とします)
- ・・・・(28)
はの値を決定する方程式でした。
さてここで、GI/M/sとGI/M/1の2つの待ち行列のジョブの到着間隔の分布が同じ種類であるとはどういうことを意味するのか考え直してみます。例えばこの2つの待ち行列がどちらも2次のアーラン分布である、というのはどういうことを意味するのか考えてみます。同じ2次のアーラン分布であっても平均値は異なるでしょう。平均値が異なっても同じ2次のアーラン分布といえるのは、2つの分布確率密度関数との間に
- ・・・・(29)
という関係があるからだということが分かります。式(29)は片方の分布の軸方向をに縮小し、密度軸方向を倍に拡大するともう片方の分布になることを表しています。密度軸方向をに拡大する理由は、そうしないと全確率が1にならないからです。つまり
なので、式(30)が成り立つ場合には、
ならば自動的に
になります。2つの分布の間に式(29)が成り立つことを「2つの分布の種類が同じである」と言うことにしましょう。GI/M/s待ち行列とGI/M/1待ち行列で平均処理時間がどちらもであったとします。そしてGI/M/sのをと表しGI/M/1のをと表すことにし、さらに
- ・・・・(30)
が成り立つとしましょう。つまりとは種類が同じです。両方の待ち行列の装置の稼働率を求めてみると、GI/M/sの稼働率は
となりますが、
はGI/M/1の稼働率そのものですから
となり、両者の稼働率は等しいことになります。よって式(30)が成り立つということは「分布の種類も同じで、稼働率も等しい」ということになります。式(30)が成り立っていると式(28)からの値も同じになります。GI/M/sのを、GI/M/1のをと表して、このことを確かめておきます。まず
- ・・・・(31)
次に
よって
- ・・・・(32)
式(31)と(32)は同じ形の式ですので
となります。ここから分布の種類と稼働率が同じであれば、の値は同じである、ということが言えます。