GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(8)

GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(7)」の最後に示した\Omega_(E_2/M/2)の近似値

  • グラフ1

には、残念ながら明らかにおかしい点があります。それはu\rightar{1}\Omega_(E_2/M/2)\rightar{1}にならないことです。u=1ならば装置は常に処理中なのですから、2台の装置が同時に処理中である確率も1になるはずです。ところが上のグラフではそうはなっていません。その理由は「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(6)」で待ち行列システム内にジョブが11個以上ある確率をゼロとみなしたことにあります。u\rightar{1}になれば、ジョブが11個以上ある確率を無視できなくなります。かといって、無視しないジョブ数を10より増やしていくと、連立一次方程式の数が増加し、Excelで取り扱うのが面倒になっていきます。そこで、11個以上ジョブが存在する状態の定常状態確率を無視したまま、u\rightar{1}\Omega_(E_2/M/2)\rightar{1}になるような\Omega_(E_2/M/2)の近似値を求める方法を考えました。それは、今の近似ではp(0,0)p(1,0)p(0,1)p(1,1)の絶対値はu\rightar{1}で精度が悪くなるが、それらの間の比率はほぼ正しい、とみなす方法です。そして、p(0,0)p(1,0)p(0,1)p(1,1)uの間に

  • 1-u=p(0,0)+p(1,0)+\frac{1}{2}[p(1,0)+p(1,1)]・・・・(86)

という関係があることを利用し、式(86)を満足するようにp(0,0)p(1,0)p(0,1)p(1,1)の値に同一の係数をかけます。式(86)が成り立つ理由は以下のとおりです。まず、待ち行列システム内にジョブがk個ある、時間平均での確率をp(k)で表すと

  • p(0)=p(0,0)+p(1,0)・・・・(87)
  • p(1)=p(0,1)+p(1,1)・・・・(88)

であることは明らかです。p(0)は装置が2台とも空いている確率、p(1)は装置が1台だけ処理中である確率、なので、空いている装置台数の時間平均での期待値は

  • 2p(0)+p(1)

になります。装置は2台あるので、1台あたり

  • p(0)+\frac{1}{2}p(1)

台空いていることになります。これは時間平均での装置が空いている確率なので1-uにほかなりません。よって

  • 1-u=p(0)+\frac{1}{2}p(1)・・・・(89)

式(89)に(87)(88)を代入すると式(86)を得ることが出来ます。


さて、式(86)を満足するようにp(0,0)p(1,0)p(0,1)p(1,1)の値を調節したのち、これらを使って\Omega(E_2/M/2)を計算した結果が以下のようになります。

  • 表2

表2において、今回の近似結果は「近似2」の欄に書かれています。一方「近似1」の欄に書かれているのは、式(86)を満足するように調整する前の値です。つまり「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(7)」の表1に示した値と同一です。これをグラフ化すると以下のようになります。

  • グラフ2

このようにしてu\rightar{1}\Omega_(E_2/M/2)\rightar{1}になる\Omega(E_2/M/2)の近似値を求めることが出来ました。