GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(12)

GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(11)」の最後で提示した近似式

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u]}{2}\frac{\Pi(M/M/s)}{s(1-u)}t_e・・・・(1)

は、「M/M/mにおける待ち確率Πの近似」の式(10)(ここでは番号を振り直して式(2)とします)

  • \Pi(M/M/s){\approx}u^{\sqrt{2(m+1)}-1}・・・・(2)

を用いれば、さらに計算が簡単になります。というのは\Pi(M/M/s)

  • \Pi_{M/M/s}=\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(3)

を用いれば近似ではなく厳密な値を計算出来るのですが、計算が面倒で、特にExcelで計算する時に面倒だからです。そこで式(2)を使うと若干精度が落ちますが計算が簡単になります。もともと式(1)が近似式なので、ここで式(2)を用いても実用上それほど問題なさそうな気がします。そこで式(2)を(1)に代入して

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u]}{2}\frac{u^{\sqrt{2(m+1)}-1}}{s(1-u)}t_e・・・・(4)

という式を作ります。この式(4)をD/M/sに適用した場合の精度を調べてみます。D/M/sに式(4)を適用すると、c_a=0c_e=1ですから、

  • CT_q(D/M/s)\approx\frac{u}{2}\frac{u^{\sqrt{2(m+1)}-1}}{s(1-u)}t_e

よって

  • CT_q(D/M/s)\approx\frac{u^{\sqrt{2(m+1)}}}{2s(1-u)}t_e・・・・(5)

です。ここで「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(9)」や「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(10)」で用いた

  • X_q=\frac{CT_q}{t_e}・・・・(6)

を式(5)を使って求めると

  • X_q(D/M/s)\approx\frac{u^{\sqrt{2(m+1)}}}{2s(1-u)}・・・・(7)

となります。式(7)によるX_qの値を、s=2,3,10の場合について調べ、「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(9)」や「GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の近似式(10)」で示したグラフに重ね合わせてみます。すると以下のようになります。

上の3つのグラフで「近似3」と示したのが式(7)による値です。「近似1」が最も真の値に近いと考えられます。このことから「近似2」と「近似3」の精度はほとんど変わらないと考えることが出来ます。精度がほとんど同じであれば、式(1)よりも式(4)のほうが実用上使いやすいので、私は式(4)を推奨することにします。