GI/G/sの待ち確率Πを求めて

ジョブ到着時に、全ての装置がふさがっている確率」で

到着間隔分布も処理時間分布も指数分布ではない場合については近似式を得ることが出来ませんでした。

と書いたのですが、よく見るとGI/M/s待ち行列の場合に成り立つ式

  • \Pi\approx\frac{b}{u}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(26)
  • ただし
    • b=\frac{(2c_a^2+[1-c_a^2]u)u}{2-(2-\{2c_a^2+[1-c_a^2]u\})u}・・・・(27)

が実はM/G/sの時にも成り立つのではないか、という気がしてきました。まず、それを確かめます。M/G/sの場合、c_a=1なので、これを式(27)に代入すると

  • b=\frac{(2+[1-1]u)u}{2-(2-\{2+[1-1]u\})u}=\frac{2u}{2-(2-2)u}=\frac{2u}{2}=u

つまり

  • b=u・・・・(29)

になります。すると式(26)は

  • \Pi\approx\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}

となって「ジョブ到着時に、全ての装置がふさがっている確率」の式(24)と一致します。ということは式(26)(27)はGI/M/sの場合だけでなくM/G/sの場合にも成り立つということが分かります。であれば、GI/G/sの場合にも式(26)(27)が成り立つのではないか、という期待が生まれます。


試しにD/D/sについて考えてみます。この場合、u<1ならば、ジョブは必ず待たずに装置で処理されます。つまり、\Pi=0です。ところで到着間隔は一定なのでc_a=0です。そこで式(27)にc_a=0を代入すると

  • b=\frac{([1]u)u}{2-(2-\{[1]u\})u}=\frac{(u)u}{2-(2-u)u}=\frac{u^2}{2-2u+u^2}

これを式(26)に代入すると

  • \Pi\approx\frac{u}{2-2u+u^2}\cdot\frac{\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}{\Bigsum_{k=0}^{s-1}\frac{(su)^k}{k!}+\frac{(su)^s}{s!(1-u)}}・・・・(30)

となり、これはu>0の時、ゼロではありません。例えばs=1とすると式(30)は

  • \Pi\approx\frac{u}{2-2u+u^2}\cdot\frac{\frac{u}{1-u}}{1+\frac{u}{1-u}}
    • =\frac{u}{2-2u+u^2}\cdot\frac{u}{1-u+u}=\frac{u^2}{2-2u+u^2}

つまり

  • \Pi\approx\frac{u^2}{2-2u+u^2}・・・・(31)

となりますが、これをグラフ化すると

となって、u<1\Pi=0という実際の値と大きく違います。ということはやはり一般のGI/G/sでは式(26)(27)はよい近似値にはならない、ということになります。