バッファ・マネジメントについて(2)

自分の理解していることを書き出しながら、考察を進めて行きたいと思います。
ここで考えるバッファ・マネジメントというのはいわゆる製品在庫の管理方法です。工場で完成したさまざまな製品が倉庫に納められています。このうちどれかはヒットして非常に売れる可能性があるのですが、あとのものはそれほど売れないかもしれません。どの製品がどのくらいヒットするのかを予め予測出来ればよいのですが、あいにくそのような予測が困難であるとします。つまり、売上げ予測といわれるものが存在したとしても、その予測はあてにならない、とします(このような状況を想定することは、それを担当されている方々にはうなずいて頂けるのではないか、と想像しております)。この場合、なるべく売り切れを発生させず、かつなるべく在庫量を少なくすることが、課題になります。そのためには、各製品毎に在庫量の上限を決めておき、その上限より少なくなったら工場に対してその製品の製造要求をする、という仕組みを考えることが出来ます。


このような仕組みを前提とすると次に問題になるのはこの上限をどのように決めるかです。しかし、その前に在庫量が上限を切った時(すなわち、上限より少なくなった時)の動作をもう少し詳しく見ておきましょう。


ある製品の在庫量が、予め定めてあった上限より1個少なくなったとします。この場合、この製品を1個生産するように工場に連絡するわけです。しかし、工場がその製品を完成させるにはある程度の時間がかかります。ひょっとするとそれは(LSIのように)1〜2ヶ月かかるかもしれません。すると、製品在庫エリアから製品1個の製造を要求したとしても、すぐにその製品が製品在庫に到着して在庫量が上限に戻る、というわけには行きません。そのような状況の時に、もう1個この製品の売上げがあって製品在庫がもう1個減ったとします。この時は製品在庫の在庫量は定められた上限より2個少なくなっています。さて、この状況で製品在庫エリアは工場に対して何個の製品生産要求を出せばよいでしょうか? 在庫量が2個空いているから2個でしょうか? しかし、先に要求した1個はすでに工場の中で生産中であり、いつかは製品在庫に到着します。工場で製品を1個生産するのに長い時間がかかるからと言って、上限と現在在庫量の差を工場への生産要求量とすると、最初の1個の製品が製品在庫に届くまでに生産要求がどんどん増えていってしまいます。これでは、やがてこれらの要求量が製品になって製品在庫に到着するので製品在庫はあふれてしまいます。こうなると在庫量の管理など出来なくなってしまいます。


このようなことを考えると、製品在庫の在庫量だけを見て工場に生産要求をかけるのは間違いで、工場に1個、生産要求をしたら、その1個は(いまだ製品在庫には到着していないにもかかわらず)製品在庫の量に加算しないといけません。ということで、工場に対して生産要求を投げる製品在庫エリアでは、製品在庫として実際の在庫量に、今、製造中の製品数(正確には「半製品数」と言うべきでしょう)も加えた数と在庫上限の差を見て、工場への生産要求を行うのが正しいやり方ということになります。


一方で、売り切れかどうかを判断するのはあくまで製品在庫エリアにある手持ちの在庫量です。ここに工場で生産中の製品の数を加えても意味がありません。顧客にとって必要なのは完成品だからです。これを手持ち在庫量と呼ぶことにしましょう。これに対して、工場で生産中の製品の数を含めた在庫量を総在庫量と呼ぶことにしましょう。そうすると

  • 工場への生産指示は総在庫量を一定に保つように指示する。

ということになります。そしてこのような仕組みによって売り切れがないように、つまり手持ち在庫量が常にゼロより大きいようにするには総在庫量をいくつに設定すればよいのか、という問題になります。本当は工場には製品が多数流れているのですが、簡単なために製品を1種類だけ取り出し、今述べた状況を図示してみます。

次に、製品の種類が複数ある場合に上の図を拡張してみます。(スペースの関係上、2製品しか書けませんでした。)

この図を見ると、以下、1製品についてのみ考察すればよさそうです。(厳密に考えれば、他の製品を生産することで生産のサイクルタイムに影響が出る可能性がありますが、ここではその影響を無視することにします。)