バッファ・マネジメントについて(5)

バッファ・マネジメントについて(4)」の最後では

という図を示し、今まで検討してきた待ち行列モデルよりも複雑なモデルになるのか、という疑問を出しましたが、どうもこれは待ち行列モデルよりも扱いが簡単そうです。そのことを見ていくために、最初に簡単な場合について考えてみましょう。
まず、需要が2日に1回、規則正しく発生するとします。本当は、需要が規則正しければバッファ・マネジメントは不要なのですが、ここは、簡単な場合から研究を始めて、だんだん難しい場合に進んでいく、という方針で進めます。この需要の累積をグラフに表すと下のグラフになります。

ここで、工場のサイクルタイム、つまり材料が工場に投入されてから製品として出てくるまでの時間、は変動せず、3日である、とします。工場のサイクルタイムが一定である、というのも簡略化した前提です。本当はサイクルタイムは変動していることでしょう。ここではこの簡単な前提を採用します。すると、需要があった日の3日後には製品在庫エリアに製品がやってくることになります。上の図では1日目に始めて需要がありましたので、この需要によって投入された材料が製品になって製品在庫にやってくるのは4日目です。そしてその後は、ちょうど需要の線を右に3日ずらしたように、製品到着の累計の線が描かれることになります。これは工場のサイクルタイムが3日なので当たり前のことです。
さて、製品在庫に到着する製品の数の累計を上のグラフに重ね合わせて描いてみます。需要の累計は黒の太線で、製品到着の累計は赤の太線で書くことにします。すると下のグラフになります。

これだけではまだ、このグラフが何の役に立つのか分からないと思います。もう少しご辛抱下さい。さて、最初(=0日目の始め)に製品在庫が3個あったとします。これに合わせて赤の線を上に3つ上げると、どのようなことが分かるでしょうか? そうしたのが下のグラフです。

まず、製品在庫には製品が到着するだけで出ていかない、と仮に考えると、赤線は、製品在庫の量(手持ち在庫量)を示しています。実際には需要があって製品在庫から製品は出ていきますから赤線は本当は手持ち在庫量ではありません。しかし、赤線と黒線の間の長さ(縦の間の長さ)を考えると、これはその日その日の手持ち在庫量になっているのではないでしょうか? 赤線の量が増加すれば0日目最初の在庫量からそれだけ在庫が増えたことになり、黒線の量が増加すれば0日目最初の在庫量からそれだけ在庫が減ったことになります。

赤線を上下させることで、品切れにならない製品在庫の数、すなわち総在庫量の最小値を求めることが出来ます。すなわち、手持ち在庫量がマイナスにならないようにして出来るだけ赤線を下げると以下のようになります。

つまり最適な総在庫量は2個、ということになります。