バッファ・マネジメントについて(6)

バッファ・マネジメントについて(5)」では、需要が規則正しく発生する場合を考察しました。今度は、需要が不規則な場合を考察してみましょう。ただし、工場のサイクルタイムは一定、という仮定はそのままにしておきます。
たとえば下図のような需要を考えます。

この需要は、1日目に2個、2日目から4日目までは0個、5日目と6日目は1個ずつ、7日目と8日目は0個、9日目は1個、10日目は2個、11日目から14日目は0個、という不規則な発生の仕方をしています。これを「[バッファ・マネジメントについて(5)]」と同じような仕方で考察してみます。まず、工場から製品在庫エリアに到着する製品の数の累計を赤線でつけ加えます。赤線は黒線を工場のサイクルタイム3日分だけ右にズラした線になります。

では、手持ち在庫数がマイナスにならないように赤線を上にズラして、適切な総在庫数を求めます。すると以下のようになります。

売り切れが発生しない最小の総在庫数はこの場合3個ということになります。


バッファ・マネジメントについて(5)」の規則的に2日に1個の需要の場合も、今回の不規則に発生する需要の場合も14日間に7個の需要がありますから、どちらも平均2日に1個の需要でした。ところが規則的な需要の場合は、売り切れが発生しない最小の総在庫数は2個だったのに対し、今回の不規則な需要の場合は、3個でした。どうも、需要が不規則になると必要な最低限の総在庫数は増えるようです。このような売り切れが発生しない最小の総在庫数のことを今後、必要総在庫数と呼ぶことにします。この必要総在庫数を、赤線を上にズラして手持ち在庫数がマイナスにならないように調整することなしに求めることは出来るでしょうか? 先ほどの

の図の段階で、それぞれの日において黒線(累積需要)と赤線(累積到着。黒線を工場サイクルタイム分右にズラしたもの)の差をみて、その最大値を求めれば、それが必要総在庫数になることが分かります。「バッファ・マネジメントについて(5)」の場合も確かめてみましょう。

確かに、差の最大値が2個になっており、それが必要総在庫数に一致していることが分かります。


では、14日の間に7個の需要があるとして、必要総在庫数一番が大きくなるような需要の発生の仕方はどのようなものでしょうか? 赤線が黒線を右にズラしたものであることを考えれば、一定の過去の累積需要数と現在の累積需要数の差が大きければ必要総在庫数が大きくなることが分かります。つまり、累積需要数の変化が大きければよいわけです。ということはある日に需要が集中すれば必要総在庫数が大きくなります。下の図は、7日目に7個の需要が集中した場合を示しています。

この場合は必要総在庫数は7個になります。
以上で、需要の変動が大きくなると必要総在庫数が増加する、ということが分かりました。