M/D/1待ち行列の待ち時間分布(1)

待ち時間制約(2)」にならって、今度はM/D/1待ち行列におけるジョブの待ち時間分布を求めてみます。さて、ジョブがM/D/1待ち行列システムに到着した時、システム内にこのジョブを含めなくてk個のジョブがある確率は、「M/D/1の定常状態分布の近似式」の式(1)(40)から近似的に

  • p(0)=1-u・・・・(1)
  • k{\ge}1の時
    • p(k){\approx}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k・・・・(2)

です。今、到着したジョブはk個のジョブが処理終了するのを待つことになります。k=0の場合も存在します。k{\ge}1の場合、k個のジョブのうち1個は処理中であり、残りのk-1個のジョブは装置が空くのを待っている状態です。待っているk-1個のジョブは固定の時間t_eで装置で処理されるので、これらのジョブが全て処理される時間は固定値の(k-1)t_eになります。さらに処理中のジョブの残り処理時間の分布について言えば、PASTAによって、到着したジョブは0からt_eまでの処理時間を均等な確率で見ることになります。よって、これは(0,t_e]の一様分布になります。よって、待ち時間が((k-1)t_e,kt_e]の範囲である場合の確率密度は一様分布になり、その積分が式(2)で与えられることになります。よって、ジョブの待ち時間の確率分布をf_q(t)で表すと

  • t>0
    • f_q(t){\approx}\frac{2(1-u)}{t_e}\left(\frac{u}{2-u}\right)^k・・・・(3)
    • ただし
      • k=ceil\left(\frac{t}{t_e}\right)・・・・(4)

です。ここにceil(a)天井関数で、a以上の最小の整数を表します。


k=0の場合は、装置は空いていますから、到着ジョブの待ち時間はゼロです。k=0になる確率は1-uなのでジョブの待ち時間の分布は、待ち時間ゼロの時の確率1-u、待ち時間がゼロより大きい場合の確率密度が式(3)で与えられる、ということになります。


上の確率分布を累積確率分布の形で表してみましょう。累積確率分布をF_q(t)で表すことにします。tの最低値は0であり、t=0である確率が1-uなので

  • F_q(0)=1-u・・・・(5)

です。一般のtの時のF_q(t)については

  • F_q(t)=F_q(0)+\Bigint_0^{t}f_q(s)ds・・・・(6)

を計算することで求めることが出来ます。ここからは図を描くと直感的に分かるのですが、積分の結果

  • F_q(t){\approx}1-u+2(1-u)\Bigsum_{n=1}^{k-1}\left(\frac{u}{2-u}\right)^n+\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}{\times}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k・・・・(7)

となります。式(7)の第2項は「よく使う式」の最初の式を利用すれば

  • 2(1-u)\Bigsum_{n=1}^{k-1}\left(\frac{u}{2-u}\right)^n=2(1-u)\frac{u}{2-u}\frac{1-\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}}{1-\frac{u}{2-u}}
    • =2(1-u)u\frac{1-\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}}{2-u-u}=2(1-u)u\frac{1-\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}}{2-2u}
    • =u\left[1-\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}\right]

なので式(7)は

  • F_q(t){\approx}1-u+u\left[1-\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}\right]+\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}{\times}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k
    • =1-u+u-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}+2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k\left(\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}\right)
    • =1-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}+2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k\left(\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}\right)

よって

  • F_q(t){\approx}1-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{k-1}+2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k\left(\frac{t-(k-1)t_e}{t_e}\right)・・・・(8)
  • ただし
    • k=ceil\left(\frac{t}{t_e}\right)・・・・(4)

となります。