M/G/1待ち行列の待ち時間分布は求めることが出来るか?

待ち時間制約(2)」の式(7)ではM/M/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布を(ここでは番号を振り直して式(1)とします)

  • F_q(t)=1-u\exp\left(-\frac{(1-u)t}{t_e}\right)・・・・(1)

と求めることが出来ました。「M/D/1待ち行列の待ち時間分布(2)」の式(9)ではM/D/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布を近似的に(ここでは番号を振り直して式(2)とします)

  • F_q(t){\approx}1-u\left(\frac{u}{2-u}\right)^{t/t_e}・・・・(2)

と求めることが出来ました。では、この2つの式から類推してM/G/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布を近似的にであっても求めることは出来ないでしょうか? 式(2)の

  • \left(\frac{u}{2-u}\right)

の部分がちょうど「M/G/1待ち行列の特性」における

  • b=\frac{(1+c_e^2)u}{2-(1-c_e^2)u}・・・・(3)

の形になっているので一般のM/G/1について

  • F_q(t){\approx}1-ub^{t/t_e}・・・・(4)

という近似式が成り立つかもしれないという希望が現れます。しかし、M/M/1ではc_e=1なので式(3)に代入するとb=uとなり

  • F_q(t){\approx}1-uu^{t/t_e}・・・・(5)

となってしまい、式(1)とは近似的にも合いません。


また、一般の処理時間分布をg(t)とした時、この処理時間が2つ連続した場合の総時間の分布(つまり、あるジョブが先行する2個のジョブの処理を待っている時間の分布)をどう求めたらよいのでしょうか? 形式的には

  • \Bigint_0^tg(\tau)g(t-\tau)d\tau

を計算することで求めることが出来る、ということが出来ますが、g(t)の内容が分からないまま上の積分を実行することは出来ません。そうするとここは、一般の処理時間分布を用いるのではなくアーラン分布を用いて計算し、そこから一般の処理時間分布の場合を類推する、という手でいくしかなさそうです。
さて、g(t)アーラン分布ならば上の積分を計算することも出来るでしょう。しかし、アーラン分布を用いた場合、ジョブ到着時に処理中だった(到着したジョブとは別の)ジョブの残り処理時間の分布をどうやって求めたらよいでしょうか? 処理時間が指数分布の場合は、指数分布の記憶なし特性のおかげで、残り時間の分布も処理時間の分布に等しい、ということが出来ました。しかし2次以上のアーラン分布の場合は、これが言えません(1次のアーラン分布は指数分布)。


では、まず、2次のアーラン分布を持つ処理時間が、ポアソン過程のタイミングで観察される場合の残り時間の分布について考察してみます。