2次のアーラン分布の残り時間分布

ここでは2次のアーラン分布を持つ処理時間が、ポアソン過程のタイミングで観察される場合に、その残り時間の分布について考察します。


下の図

のようなマルコフ過程を考えます。今、システムが状態Aにあるとして、dtの間に常に

  • \frac{2}{t_e}dt

の確率で状態Bに遷移するとします。すると、現在から状態Bへの遷移が起きるまでの時間の分布は平均

  • \frac{t_e}{2}

の指数分布になります。今、システムが状態Bにあるとして、状態Aへの遷移が起きるまでの時間の分布もまったく同じ分布になります。そうすると、システムが今、状態Aにあって、一旦状態Bに遷移して、再び状態Aに戻るまでの時間の分布は、2つの指数分布の確率変数の和となり、それは平均t_eの2次のアーラン分布になります。この状態B→Aの遷移が起きた時刻から次のB→Aの遷移が起きるまでの時刻の間の時間は2次のアーラン分布を持つことになります。
では、任意の時刻にこのシステムを観測した場合、その時点から遷移B→Aが発生するまでの時間はどのような分布になるでしょうか? まず、それはシステムがどちらの状態にいるかによります。観測するのは任意の時刻ですから、システムが状態Aにいるのを観測するのが1/2、状態Bにいるのを観測するのが1/2になります。
もし、システムが状態Aにいるのでしたら、その時点(観測した時点)からの残り時間、すなわち、遷移B→Aが起きるまでの時間は、図から平均t_eの2次のアーラン分布になるはずです。よって、この分布をR_a(t)と書くとこれは「アーラン分布」の式

  • f(t,\lambda,k)=\frac{\lambda^kt^{k-1}}{(k-1)!}\exp(-\lambda{t})・・・・(1)

k=2\lambda=2/t_eを代入したものとなり、

  • R_a(t)=\frac{4t}{t_e^2}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)・・・・(2)

と書くことが出来ます。
もし、システムが状態Bにいるのでしたら、その時点(観測した時点)からの残り時間、すなわち、遷移B→Aが起きるまでの時間は、図からt_e/2の指数分布になるはずです。よって、この分布をR_b(t)と書くと、

  • R_b(t)=\frac{2}{t_e}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)・・・・(3)

と書くことが出来ます。観測した時点にシステムが状態Aにいる確率が1/2、状態Bにいる確率が1/2なので、分布が式(2)の形になる確率が1/2、式(3)の形になる確率が1/2になります。よって、残り時間の分布は両者を平均したものになります。よって、残り時間の分布をR(t)で表すと、

  • R(t)=\frac{1}{2}R_a(t)+\frac{1}{2}R_b(t)=\frac{2t}{t_e^2}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)+\frac{1}{t_e}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)

よって

  • R(t)=\frac{2t+t_e}{t_e^2}\exp\left(-\frac{2t}{t_e}\right)・・・・(4)

となります。これで2次のアーラン分布の残り時間の分布を求めることが出来ました。


この分布をグラフに表してみます。下のグラフはt_e=1の場合のグラフです。

「E2」の線が2次のアーラン分布の残り時間分布を表します。比較のために指数分布の時と一定時間の時の残り時間の分布も載せました。「M」が指数分布の場合を、「D」が一定時間の場合を示します。