M/G/s待ち行列の待ち時間分布の近似
「M/G/1待ち行列の待ち時間分布の近似(1)」での考察をM/G/sの場合に拡張してみましょう。
「M/M/s待ち行列の待ち時間分布」の式(10)ではM/M/1待ち行列の待ち時間の累積確率分布を(ここでは番号を振り直して式(1)とします)
- ・・・・(1)
と求めることが出来ました。これをM/M/1の場合の待ち時間の累積確率分布(「待ち時間制約(2)」の式(7)参照。ここでは番号を振り直して式(2)とします)
- ・・・・(2)
と比較すると、の前のがに置き換わり、の中のがに置き換わっただけです。このことから類推して、M/G/1の場合の待ち時間の累積確率分布(「M/G/1待ち行列の待ち時間分布の近似(1)」の式(9)参照。ここでは番号を振り直して式(3)とします)
- ・・・・(3)
をM/G/sに拡張した場合の式を
- ・・・・(4)
と想定します。すると、の時の待ち時間の確率密度関数は、式(4)をで微分して
- ・・・・(5)
となります。このは指数分布にを掛けた形になっていますので、待ち時間の平均値は簡単に求めることが出来て
- ・・・・(6)
になり、「M/G/s待ち行列の特性」で示したM/G/sのの式に一致します。さらに、式(4)から
- ・・・・(7)
となりますが、これはジョブの到着時、待ちのない確率がであることを示しています。つまり、ジョブの到着時に装置が全てふさがっている確率は
- ・・・・(8)
になり、これも「M/G/s待ち行列の特性」で示した式に一致します。さらに、でになることも累積確率分布としての正当性を示しています。
最後にM/D/sについても式(4)が妥当な近似式であることを示します。の値として(ただし)の場合のみを取り上げてF_q(t)の値を考察します。あるジョブが到着した際にシステム内にジョブが個以下ならば、到着したジョブの待ち時間は以下になります。逆に到着したジョブの待ち時間が以下であるならば自分が処理を開始するまでに処理完了するジョブの数は1装置あたり個以下であり、他の装置も含めると全部で個以下です。自分が処理開始する際にまだ処理中のジョブが多くて個あるので、自分の前には多くて個、すなわち個のジョブが到着時にあったことになります。よって、は、到着時にシステム内にジョブが個以下である確率に等しくなります。到着過程はポアソン過程なのでPASTAを用いることが出来て、この確率は時間平均でシステム内にジョブが以下存在する確率に等しくなります。M/D/sでジョブが個存在する確率は「M/D/s待ち行列の定常状態分布の近似(2)」の式(8)により近似的に
- ・・・・(9)
- の場合
- ・・・・(10)
- ただし
- ・・・・(11)
なので、ジョブがシステム内に個以下存在する確率は
になります。よって
よって
よって
- (ただし、)・・・・(12)
この式(12)のは「M/G/1待ち行列の待ち時間分布の近似(2)」で述べた考察に従えば、
とほぼ等しい値になるので、式(12)は式(4)でとした式とほぼ一致することになります。よってM/D/sにおいても式(4)が妥当な式であることが分かります。よって、M/G/sの待ち時間の分布の近似式として式(4)が妥当であることが分かります。