今年のまとめ

私の待ち行列理論の研究(?)における今年のまとめです。


大きな成果の1つは「長年の疑問が解けた!」のところで述べたように、GI/G/s待ち行列の平均待ち時間の式(ちなみにGI/G/s待ち行列とは一般の待ち行列のこと)

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2[c_a^2(1-u)+u]}{2}\frac{\Pi(M/M/s)}{s(1-u)}t_e

かなり綱渡りの方法でですがともかくも導き出すことが出来たことです。とはいえ、ここであわててつけ加えなければなりません。最近になってどうもこの式はc_a{\le}1の場合にのみ適用すべきであり、c_a>1の場合は

  • CT_q(GI/G/s)\approx\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{\Pi(M/M/s)}{s(1-u)}t_e

に置き換えたほうが精度がよさそうだ、ということが分かり始めたということをです。このことについては新年になってからアップしていきたいと思います。


2番目の成果は、今、まさに検討中ですが、GI/G/s待ち行列の待ち時間分布の近似式が求められそうなことです。これについては「GI/G/s待ち行列の待ち時間分布を求めて(1)」を参照下さい。ここに登場する

  • F_q(t){\approx}1-\frac{b\Pi}{u}\exp\left(-\frac{2(1-b)st}{(1+c_e^2)t_e}\right)

という式がその近似式です。ただしF_q(t)はGI/G/s待ち行列の待ち時間の累積確率分布関数です。そして今、検討中なのはこのbの値です。さらに

  • \frac{b\Pi}{u}

がその待ち行列での待ち確率、つまりジョブが到着した時にそのジョブが全ての装置が処理中であるのを見る確率、になることから、bの値を求めることが同時に待ち確率を求めることにもつながってくることが分かってきました。


3番目の成果は待ち行列理論の理論的なところからは外れますが、実際の工場運用では重要になる製品在庫の運用方法、つまりバッファ・マネジメントについて考察を述べることが出来たことです。これは「バッファ・マネジメントについて(1)」から[(10)」にかけてアップし、そのまとめを「バッファ・マネジメントについて(まとめ)」に述べました。


4番目の成果は待ち行列の特性について今まで分かったことをまとめたことです。

しかし、1番目の成果のところで述べたように平均待ち時間の式には修正が必要であり、その修正は他のところにも影響をおよぼすでしょう。これは来年に取り組むことになります。


あとManufacturing Systems Modeling and Analysis

を読了したことも今年の成果ですが、やはりかんばんの解析は難しい、ということを確認するだけの結果になったことは残念です。この本からはむしろ、バッチ処理についての洞察を吸収すべきだと感じていますが、それはまだ出来ていません。