GI/G/sのΠとΩの比(3)

GI/G/sのΠとΩの比(2)」のつづきです。
この一連のエントリの目標は「GI/G/sのΠとΩの比(1)」の式

  • B=\frac{\Pi(GI/G/s)}{\Omega(GI/G/s)}・・・・(1)

で、装置の処理時間の分布は固定のまま、そして到着間隔分布は

  • g(t;s)=sg(st;1)・・・・(2)

に従って変化させるという条件でsを変化させた時にbが変化する様子を明らかにする、というものでした。とはいえ、一般のGI/G/sについてこれを求めることは手強そうです。そこで最初にM/G/sの場合について検討し、次にGI/M/sの場合について検討し、それらの結果からGI/G/sの場合のbの変化の様子を推測する。そして出来れば証明を試みる、という道筋で検討しようと思います。まず、M/G/sの場合です。

M/G/sの場合

M/G/sの場合はPASTAが成立するので
\Pi(GI/G/s)=\Omega(GI/G/s)・・・・(18)
です。よって

  • B=\frac{\Pi(GI/G/s)}{\Omega(GI/G/s)}=1

よって

  • B=1・・・・(19)

となります。つまりM/G/sの場合はbsの変化に関わらず常に1ということになります。

GI/M/sの場合

GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(17)
(ここでは番号を振り直して式(20)とします)

  • p(k)=ub^{k-s-1}(1-b)\Pi(GI/M/s) ただしk{\ge}s・・・・(20)

によれば、GI/M/sの場合の定常状態分布p(k)k{\ge}sの場合には式(20)で与えられることになります。
定義により\Omega(GI/M/s)

  • \Omega(GI/M/s)=\Bigsum_{k=s}^{\infty}p(k)・・・・(21)

なので、式(21)に式(20)を用いることが出来て

  • \Omega(GI/M/s)=\Bigsum_{k=s}^{\infty}p(k)=\Bigsum_{k=s}^{\infty}ub^{k-s-1}(1-b)\Pi(GI/M/s)
    • =\frac{u}{b}(1-b)\Pi(GI/M/s)\Bigsum_{k=s}^{\infty}b^{k-s}=\frac{u}{b}(1-b)\Pi(GI/M/s)\Bigsum_{k=0}^{\infty}b^k
    • =\frac{u}{b}(1-b)\Pi(GI/M/s)\frac{1}{1-b}=\frac{u}{b}\Pi(GI/M/s)

よって

  • \Omega(GI/M/s)=\frac{u}{b}\Pi(GI/M/s)・・・・(22)

よって

  • B=\frac{\Pi(GI/M/s)}{\Omega(GI/M/s)}=\frac{b}{u}

よって

  • B=\frac{b}{u}・・・・(23)

今回のsの変化においてuは一定でした。ではbはどうでしょうか? bは「GI/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(11)(ここでは番号を振り直して式(24)とします)

  • b=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)st}{t_e}\right)g(t)dt・・・・(24)

で求めることが(形式的には)出来ます。ここでg(t)は到着間隔の分布関数です。ここで式(24)のbg(t)sの関数であることを顕に表現するために、それぞれb(s)g(t;s)で表すことにします。すると以下のようになります。

  • b(s)=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)st}{t_e}\right)g(t;s)dt・・・・(25)

ここで式(2)を用い、さらにst=\tauと置くと

  • b(s)=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)st}{t_e}\right)g(t;s)dt=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)st}{t_e}\right)sg(st;1)dt
    • =\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)\tau}{t_e}\right)g(\tau;1)d\tau=\Bigint_0^{\infty}\exp\left(-\frac{(1-b)t}{t_e}\right)g(t;1)dt=b(1)

よって

  • b(s)=b(1)

つまりbの値はsに依存しないことになります。よってBもまたsには依存しないことになります。