GI/M/s待ち行列の平均待ち時間

GI/G/s待ち行列の平均待ち時間」で述べた

すなわち

  • L_q(GI/M/s)=\frac{\Omega(GI/M/s)}{u}L_q(GI/M/1)

です。この証明は別途示します。

について証明を示します。「I/M/s待ち行列の到着時刻状態分布に向けて(2)」の式(15)(ここでは番号を振り直して式(1)とします)

  • \pi(k)=\Pi(GI/M/s)(1-b)b^{k-s} ただしk{\ge}s・・・・(1)

です。ただし\pi(k)はジョブが到着した時、そのジョブを除いてk個のジョブがシステム内に存在する確率です。もしk個のジョブが存在するならば、到着したジョブの前に待っているジョブの数はk-s個です。ですので、これらのジョブが全て処理開始になるまでの時間の平均値は

  • \frac{k-s}{s}t_e・・・・(2)

になります。一方、このジョブが到着した時点での、処理中のs個あるジョブのうち1個が処理完了するまでの時間の平均値は、処理時間の分布が指数分布であることから、1個のジョブが任意の極小のdtの時間間隔に処理完了する確率は

  • \frac{dt}{t_e}・・・・(3)

よってs個あるジョブのうちどれか1個のジョブが任意の極小のdtの時間間隔に処理完了する確率は、

  • \frac{sdt}{t_e}・・・・(4)

です。よって、任意の時点からs個あるジョブのうちどれか1個のジョブが完了するまでの平均時間は

  • \frac{t_e}{s}・・・・(5)

になります。結局、到着したジョブの待ち時間の平均値CT_q(k)は、今処理中のs個のジョブのうちどれかが処理完了するまでの平均時間、式(5)、プラス、待っているk個のジョブが処理開始されるまでの平均時間、式(2)、となり

  • CT_q(k)=\frac{k-s+1}{s}t_e・・・・(6)

となります。kにかかわらないジョブの待ち時間の平均値CT_q

  • CT_q=\Bigsum_{k=s}^{\infty}\pi(k)CT_q(k)・・・・(7)

となります。式(7)に(1)(6)を代入すると

  • CT_q=\Bigsum_{k=s}^{\infty}\Pi(GI/M/s)(1-b)b^{k-s}\frac{k-s+1}{s}t_e
    • =\Bigsum_{k=0}^{\infty}\Pi(GI/M/s)(1-b)b^k\frac{k+1}{s}t_e
    • =\Pi(GI/M/s)(1-b)\frac{t_e}{s}\Bigsum_{k=1}^{\infty}b^{k-1}k

ここで「補足」の式(2)(ここでは番号を振り直して式(8)とします)

  • \Bigsum_{k=1}^{\infty}kr^{k-1}=\frac{1}{(1-r)^2}・・・・(8)

を用いると

  • CT_q=\Pi(GI/M/s)(1-b)\frac{t_e}{s}\frac{1}{(1-b)^2}
    • =\Pi(GI/M/s)\frac{1}{s(1-b)}t_e

よって

  • CT_q=\frac{\Pi(GI/M/s)}{s(1-b)}t_e・・・・(9)

ここでリトルの法則を用いると、スループット

  • \frac{su}{t_e}

であるので、平均待ち行列L_q(GI/M/s)

  • L_q(GI/M/s)\frac{t_e}{su}=\frac{\Pi(GI/M/s)}{s(1-b)}t_e

よって

  • L_q(GI/M/s)\frac{1}{u}=\frac{\Pi(GI/M/s)}{1-b}
  • L_q(GI/M/s)=\frac{\Pi(GI/M/s)u}{1-b}・・・・(10)

式(10)でs=1とすると

  • L_q(GI/M/1)=\frac{\Pi(GI/M/1)u}{1-b}・・・・(11)

式(10)(11)から

  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=\frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}・・・・(12)

ここで「GI/G/sのΠとΩの比(3)」の式(22)8ここでは番号を振り直して式(13)とします)

  • \Omega(GI/M/s)=\frac{u}{b}\Pi(GI/M/s)・・・・(13)

s=1とすると

  • \Omega(GI/M/1)=\frac{u}{b}\Pi(GI/M/1)・・・・(14)

式(13)(14)から

  • \frac{\Pi(GI/M/s)}{\Pi(GI/M/1)}=\frac{\Omega(GI/M/s)}{\Omega(GI/M/1)}・・・・(15)

式(15)を(12)に代入して

  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=\frac{\Omega(GI/M/s)}{\Omega(GI/M/1)}・・・・(16)

ここで\Omega(GI/M/1)は定義からuに等しいので、式(16)は

  • \frac{L_q(GI/M/s)}{L_q(GI/M/1)}=\frac{\Omega(GI/M/s)}{u・・・・(17)

よって

  • L_q(GI/M/s)=\frac{\Omega(GI/M/s)}{u}L_q(GI/M/1)・・・・(18)

となります。