Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(2)

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1.導入
標準的なGI/G/m待ち行列モデルを記述する主要な定常状態混雑尺度の比較的単純な近似を私は提示する。GI/G/mモデルはm台の同一のサーバからなる単一のサービス施設と、無制限の待ち場所と最初に来たものを最初に応対する待ち行列規律を持つ。サービス時間は同一の一般の分布で独立に分布し(IID*1 )、到着間隔時間も一般分布のIIDであり、到着間隔時間はサービス時間と独立である。一般の到着間隔時間とサービス時間の分布はそれぞれ最初の2つのモーメントによってそれぞれ部分的に規定されると仮定する。つまり、到着過程は到着間隔時間の到着レート\lambda(平均到着間隔時間は\lambda^{-1})と乗変動係数(SCV、変動を平均の2乗で割ったもの。c_a^2で示す)で部分的に規定されると仮定する。(私は変動の代わりにSCVを使用する。というのはこれは次元のない量で、平均と独立に容易に解釈出来る。) 同様に、サービス時間分布はその平均\tauとそのSCVc_s^2によって部分的に規定されると仮定する。よってこのモデルの全ての記述は5つの基本パラメータの組(\lambda,c_a^2,\tau,c_s^2,m)にのみ依存する。
 GI/G/m待ち行列モデルは包括的なので、多くの応用の可能性がある(例えば、コンピュータや通信や生産システムへの適用)。ここで私は生産システム、特に生産ネットワークの性能分析へのモデルの適用を強調する(背景についてはBuzacottとShanthikumar 1992、と、Suri、Sanders, Kamath 1993を参照)。近似はSuri他が総体動的モデル(ADMs*2 )と呼んでいるものの中で粗い解析を実行するために使用出来る(し、使用された)。確かにこの論文は私の以前の論文、Whitt (1985)の小規模な改版であり、キューイング・ネットワーク・アナライザ迅速モデル化ツールに関する作品の中で以前引用された(SegalとWhitt 1989mSuriとde Treville 1991, 1992、Whitt 1992, 1994、Suri、Sanders、Kamath 1993)。Tijims (1986)はかれの第4章でGI/G/m近似についての背景を提供した。
 GI/G/mモデルの正確な記述を得るための数値的手続きに関して大きな進歩がなされた(TakahashiとTakami 1976、de Smit 1983a, 1983b、van HoornとSeelen 1984、LucantoniとRamaswami 1985、RamaswamiとLucantoni 1985a, 1985b、Seelen 1986、Bersimas 1988, 1990、Abate, Choudhury, Whitt 1993)。若干の応用についてこれらの手続きはここで開発した種類の近似の必要性を除去した。しかし正確な数値的手続きが使用可能であっても、簡潔な要約として単純な近似を持つことは有益である。他の応用について、例えばGI/G/mモデルがサブモデルとして現れる場合、単純な閉形式の解析的公式はやはり有用である。我々は我々の近似を評価するために正確な数値計算結果を用いる。
 私が提示する近似は直接単純なGI/G/m待ち行列に適用でき、しばしばおおざっぱな公式(Whitt 1992)をもたらす。しかし、それらの最も普通な応用は待ち行列のネットワークを解析するためのアルゴリズム内のサブルーチンとしてである。AT&Tベル研究所はここでの近似のいくつかをそのキューイング・ネットワーク・アナライザ(QNA)ソフトウェア・パッケージの中で適用した(Whitt 1983a, 1984c、SegalとWhitt 1989)。ここでの近似は他の人々によって開発されたソフトウェア・パッケージの中でもまた使用されてきた。
 QNAは指数分布でないサービス時間とポアソンでない到着過程とマルコフ的でない(例えば、決定論的)ルーティングを持つオープン待ち行列ネットワーク・モデルを記述する。それについては正確な解析的手法は利用出来ない。近似の方法はパラメータ的分解であり、ネットワーク内の待ち行列は独立なGI/G/mモデルとして扱われ、各々が自分の5つ組の基本パラメータ\lambda,c_a^2,\tau,c_s^2,mによって部分的に規定される。目標は待ち行列と個々の待ち行列での到着過程の実際の性質との間の依存関係の主要効果を捕らえるために個々の待ち行列での2つの到着パラメータ(\lambdac_a^2)を使用することである。通常の交通量連立一次方程式を解く厳密な解析は到着レートを決定し、もうひとつの連立一次方程式を解くことによって到着変動パラメータの近似を決定する(Whitt 1982b, 1983a)。
 各々の待ち行列での到着間隔時間は普通独立ではなく、2パラメータによる特徴づけは(独立な到着間隔時間を持つ)再生過程による近似である。この考えは連続する到着間隔時間の間の依存関係を無視するものではなく変動パラメータc_a^2でその本質的な性質を捉えようとするものである。この依存性は、故意にc_a^2を到着間隔時間のSCVと異なる値にすることによってc_a^2の中に表現される。これを実行する方法、例えば漸近法、はFendickとWhitt (1989)、Fendick, Saksena, Whitt (1991)、Whitt (1982b, 1983a, 1994)の中に記述されている。

*1:Independent and Identically Distributed

*2:Aggregate Dynamic Models