古代エジプトの魔術
- 作者: E.A.ウォーリス・バッジ,石上玄一郎,加藤冨貴子
- 出版社/メーカー: 平河出版社
- 発売日: 1982/05
- メディア: 単行本
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19世紀末から20世紀始めにかけてイギリスはロンドンにある有名な大英博物館のエジプト室の室長を勤めた当時の有名なエジプト学者ウォーリス・バッジの書いた本の翻訳がこの本です。彼は「死者の書」(ミイラと一緒に入っている書物)の翻訳でも有名ですが、この本は死者の書の解説と考えることも出来ます。
タイトルの訳を「古代エジプトの呪術」としたほうが文化人類学的な感じが出て、少し怪しさが減ったことだろうと思いますが、訳者の石上(「いそのかみ」ではない。「いしがみ」)玄一郎氏は原語のタイトルにある「magic」の語の語源が古代ペルシアのゾロアスター教の祭司であるマギ(magi)に由来すると言われていることと、
・・・古代エジプトの場合、アーリマンに相応し、しかもそれよりも一層、古い邪神にセトなるものがあって、邪神セトと善神ホルスとの戦いは、ゾロアストル教におけるアフラマズダとアーリマンとの対決の原型とも見做されるところのものであるから、「呪術」よりも、むしろ「魔術」の方が、よりふさわしいと考えた・・・・
「古代エジプトの魔術」の「訳者あとがき」より
そうです。
- 話は横にそれてしまうのですが、以前、田中清玄自伝
- 作者: 田中清玄,大須賀瑞夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/05/08
- メディア: 文庫
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- (田中清玄についてはこちらを参照)に、旧制弘前高校の時の思いでにこの石上玄一郎氏が登場し、彼が太宰治とも同学年であったこと、旧制弘前高校で(文学関係で)話題を集めていたのは石上であって太宰はそれより劣るとされていたこと、が田中清玄の言葉として載っているのを読んでびっくりしたことがあります。(この田中清玄と、昨年高齢で亡くなったオットー・フォン・ハプスブルクが親交があって・・・・などと話し出すとどんどん話が脇に逸れていってしまいます。)石上玄一郎氏、もともとは小説家だそうです。
で、ウォーリス・バッジのこの本に戻りますと、章立ては以下のようになっています。
- エジプトの魔術の起源
- 魔法の護符
- 魔法の像
- 魔法の絵と呪文
- 魔力ある名前
- 魔法の儀式
- 悪魔憑き・夢・星占い・変身
私は古代エジプトの珍しい話が、多くは断片的にですが含まれているのに興味を持ちました。たとえばラムセス3世に対する陰謀についての裁判の公式記録に書かれたラムセス3世に対する呪詛の様子、ラー神の敵である大蛇アポピを撃退する呪文、イシスが息子ホルスとともにセトの手から逃亡する時のある逸話、イシスとラーの物語、などです。(またマニアックになってしまった。)
「魔法の護符」の章は、さまざまな記号や形に込められた意味を解説した章で、古代エジプトの遺物を見る際に参考になると思います。