Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(8)

原文は

から入手出来ます。


 公式(2.10)は本質的に閉形式であるが、累積正規分布 \Phi(t)を含んでいる。しかし累積正規分布は適切な近似で非常に正確に近似出来る(AbramowitzとStegun 1972、p.299)。(2.10)はさらによい近似を得るためにさらに改善出来るであろうが、それはこの論文の範囲外である。公式(2.10)を用いるとmがかなり小さくて\rhoがかなり大きい時に正確な値を一貫して若干過小評価するが、mがかなり大きくて\rhoがかなり小さい時に正確な値を一貫して過大評価する(表13)。後者の不一致は結構大きくなり得る(例えば、\rho=0.70かつm=100)ので、この領域では(2.10)を改良するのが役立つ。
 大きなmかつ、それほど大きくない\rhoについては、\tau\rhoを固定したまま\lambda\rightar\inftyかつm\rightar\inftyにしたGI/G/mシステムについての重負荷極限定理に関係する正規分布近似を考慮するのは自然なことである(Iglehart 1965、Borokov 1967、Whitt 1982a、GlynnとWhitt 1991、Whitt 1992)。これはM/G/\inftyシステムについては、単に正確なポアソン分布の正規分布近似である。その近似は

  • P(N(M/M/m){\ge}m)\approx{P}(N(M/M/\infty){\ge}m)\approx{P}(N(M/M/\infty){\ge}m-0.5)
    • \approx{1}-\Phi((m-m\rho-0.5)/\sqrt{m\rho})・・・・(2.11)

である。ただしここでも\Phiは累積標準正規分布である。正規分布近似(2.11)はセクション3でさらに議論される。\rhoが大きくmが小さい時、これは明らかに近似方法としてまずいが、\rhoが小さくてmが大きい時の改良された混合型の近似を構築するためのツールとして有望であることを示している。
 Sakasegawa (1977)は別のEW(M/M/m)の閉形式近似を提案した。

  • EW(M/M/m)\approx\tau(\rho^{(\sqrt{2(m+1)}-1)})/(m(1-\rho))・・・・(2.12)

公式(2.12)は非常にうまくいくことを示してきたが、これはすでに知られている重負荷極限と整合しない。特に、(2.12)はmを固定して\rho\rightar{1}で(1の代わりに)(1-\rho)EW\rightar{0}をもたらし、(2.12)は(1-\rho)m^{1/2}\righta\beta\rho\rightar{1}かつm\rightar\inftyで[(2.10)の代わりに](1-\rho)EW\rightar{0}をもたらす。数値実験と整合させると、この分析は、(2.12)と、(2.12)を以下の(2.14)を組合わせて得られる対応するGI/G/m近似は、真の値を超えることになるだろう。表1では(2.12)の近似と(2.10)プラス(2.6)の近似を正確なM/M/mの値と比較している。[この近似は実際にはEQに適用された。これは(2.2)によって等価であることが示される。] 両方の近似は非常に軽いトラフィックの場合を除いて非常にうまくいく(表1)。


表1
M/M/mモデルにおける期待待ち行列長(サービス中の客を除く)EQの近似と正確な値の比較

正確な値は(2.5)と(2.3)から求めた。「Sak」は(2.2)と(2.13)を組合わせて得られるSakasegawa (1977)の近似であり、一方「Half-Whitt」近似は(2.2)、(2.6)、(2.10)を組合わせて得られる。表1〜29における空白は、データが利用可能でなかった場合に起きる。