Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(7)

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から入手出来ます。


2.3.M/M/mモデル
 私の近似を構築するためにM/M/mモデルについてのよく知られた正確な値を用いる(HalfinとWhitt 1981, セクション1)。アーラン待ち公式、すなわちアーランC公式はここでの主要な量であり、全てのサーバがビジーである確率を与える。

  • P(B=m)=P(N{\ge}m)=[(m\rho)^m/m !(1-\rho)]\zeta・・・・(2.3)

ただし

  • \zeta=\left[(m\rho)^m/(m !(1-\rho))+\Bigsum_{k=0}^{m-1}(m\rho)^k/k !\right]^{-1}・・・・(2.4)

到着過程はポアソンなので(Wolf 1982)、M/M/mモデルにおいてP(W>0)=P(N{\ge}m)。この関係は全てのM/G/mモデルでも成り立つが、他のGI/G/mモデルでは成り立たない。というのはNは任意の時刻でのシステム内平衡個数(連続時間過程に関する定常状態分布)であるが、Wは客が到着した瞬間における待ち時間であるからである。Seelen、Tijims、van Hoor (1985)は彼らの表の中で多くのGI/G/mモデルについてP(W>0)P(N{\ge}m)の差を示している。

  • EQ=P(N{\ge}m)\rho/(1-\rho)・・・・(2.5)

[HalfinとWhitt 1981, (1.8)]なので アーランC公式(2.3)はM/M/mモデル内の期待待ち行列長について意味を持つ。(2.2)と(2.5)から

  • EW=\tau{P}(N{\ge}m)/m(1-\rho)・・・・(2.6)

を得る。
 公式(2.5)と(2.6)はEQEWを2つの部分に分解するのが自然であることを示している。

  • EQ=P(N{\ge}m)E(Q|N{\ge}m)・・・・(2.7)
  • EW=P(W>0)E(W|W>0)・・・・(2.8)

ただし

  • E(Q|N{\ge}m)=\frac{\rho}{1-\rho}
  • E(W|W>0)=\frac{E(Q|B{\ge}m)}{\lambda}=\frac{\tau}{m(1-\rho)}・・・・(2.9)

mが大きくなるとしばしばP(N{\ge}m)=P(W>0)が小さくなるので、(2.7)と(2.8)の両方の部分に注目するのは有用である。これはGI/G/m定常状態の振舞を正しく理解するのに重要である。
 私はGI/G/mにおけるEWの近似をM/M/mモデルのアーランC公式(2.3)の正確な値とともに(2.6)を用いて構築する。[(2.3)の正確な計算には注意を要する。] しかし若干の応用においてEWを近似するには、アーランC公式の閉形式近似式が便利であろう。HalfinとWhitt (1981)はアーランC公式の閉形式近似を開発した。それは

  • P(N{\ge}m)\approx\xi\equiv\xi(\beta)=[1+\sqrt{2\pi}\beta\Phi(\beta)\exp(\beta^2/2)]^{-1}・・・・(2.10)

である。ただし\beta=(1-\rho)m^{1/2}であり\Phi(t)は平均0、分散1を持つ標準正規分布の累積分布関数(CDF *1 )である。HalfinとWhitt (1981) 定理1は(2.10)が重負荷のあるケースで、特に\rho\rightar{1}かつm\rightar\infty(1-\rho)m^{1/2}\rightar\betaの時に、漸近的に正しいことを証明した。実際、近似(2.10)は広範囲のm\rhoでうまくいく(表13と表1.これは正確な関係式(2.2)と(2.5)と組み合わせるとEQの近似をもたらす)。しかし、近似の精度は\betaを固定してmを増加させるにつれて、あるいは(1-\rho)m^{1/2}が増加するにつれて悪くなる傾向がある。

*1:Cumulative Distribution Function