Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(27)

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から入手出来ます。

4. 待ち時間分布
 このセクションでは定常状態待ち時間Wと定常状態滞在時間Tの分散とさらにそれらの分布全体についての近似を得る。セクション4.1ではここでまた適用するWhitt (1983a、セクション5)での近似手続きを見直す。セクション4.2では漸近法に基づいた別の方法について手短に検討する。これについてはここでのEWE(W|W>0)の近似に用いることが出来る。セクション4.3では数値比較を行う。


4.1. 条件待ち時間
 待ち時間の分散\rm{Var}(W)と待ち時間累積分布関数P(W{\le}x)の近似を得るために、Whitt (1983a、セクション5.1)でGI/G/1待ち行列について用いたのと同じ手続きを採用する。サーバがビジーであるとした時の条件待ち時間D=(W|W>0)に注目する。明らかに

  • ED=EW/P(W>0)・・・・(4.1)

よって先の(2.24)のEWの近似式と(3.9)のP(W>0)の近似式を組合わせてEDの近似式を得る。Whitt (1983a)の公式(50)に従って、Dの2乗変動係数(SCV)、c_D^2の以下の近似式を導入する。

  • c_D^2=2\rho-1+4(1-\rho)d_s^3/3(c_s^2+1)^2・・・・(4.2)

ただし、d_s^3=E(V^3)/(EV)^3であり、Vはサービス時間である。3次モーメントE(V^3)は部分的モデル仕様では利用可能でないので、H_2E_kの分布に基づく近似を用いる。具体的には、

  •  d_s^3=\left\{\begin{array}3c_s^2(1+c_s^2)&\;&c_s^2{\ge}1\\(2c_s^2+1)(c_s^2+1)&\;&c_s^2<1\end{array}・・・・(4.3)

とする。公式(4.2)はM/G/1モデルについては正確な公式であり、Hokstad (1978)が提案したように、M/G/mモデルについての近似式として用いられる。次にc_D^2M/G/mモデルと同様にGI/G/mモデルについての近似として用いる。この考えは条件待ち時間は到着間隔時間分布よりもサービス時間分布にずっと依存するはずだ、というものである。SeelenとTijims (1984)はこの近似方針についてさらに支持を与えた。
 (4.1)〜(4.3)から単純なやり方で2次モーメントと分散の近似を得る。

  • \rm{Var}(D)=(ED)^2c_D^2=(EW)^2c_D^2/P(W>0)^2
  • E(D)^2=\rm{Var}(D)+(ED)^2
  • c_W^2=\frac{E(W^2)}{(EW)^2}-1=\frac{c_D^2+1-P(W>0)}{P(W>0)}
  • \rm{Var}(W)=(EW)^2c_W^2
  • E(W^2)=\rm{Var}(W)+(EW)^2・・・・(4.4)

 次にWhitt [1983a、公式(55)〜(61)]で述べたように、待ち時間分布を、また(3.9)を用いてゼロでのかたまりP(W=0)を持つようにし、(4.1)と(4.2)によるEDc_D^2を与えてDの密度を合わせることによって近似する。
 (4.4)から滞在時間混雑尺度を容易に求めることが出来る。滞在時間は独立な待ち時間とサービス時間の合計なので、

  • ET=EW+\tau、そして、\rm{Var}\;T=\rm{Var}\;W+\tau^2c_s^2・・・・(4.5)

よって、E(T^2)=\rm{Var}\;T+(ET)^2、そして、c_T^2=\rm{Var}\;T/(ET)^2