Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(31)

原文は

から入手出来ます。


5. 待ち行列長とシステム内個数
 このセクションでは、定常状態での任意の時点でのシステムを記述する、待ち行列Q(サービス中の客を除く)とシステム内個数N、の近似式を開発する。GI/G/mモデルにおける平均EQENの近似は、EWの近似式(2.24)を用いて、(2.1)と(2.2)によってすでに確立されている。セクション5.1ではP(Q>0)の近似を開発する。セクション5.2ではQNの2次モーメント、つまり分散と2乗変動係数の近似を開発する。セクション5.3と5.4でQNの分布の近似を開発し、セクション5.5で数値比較を行う。最後にセクション5.6で有限の待ち場所がある場合のNの分布の近似について簡単に検討する。
 このセクションでの近似は以前のセクションの近似よりもより調査段階のものであるので、精度がより劣る傾向がある。そして数値比較のための正確な値もより少ない。


5.1. 待ち行列が空でない確率
 さて以前の近似に基づいてP(Q>0)、つまり定常状態で任意の時刻に待ち行列が空でない確率、を得ることにする。P(Q>0)=P(N{\ge}m+1)なので、セクション3.1での以前のP(N{\ge}m)の近似は別の数量である。もちろん、[tex:P(Q>0)=P(N{\ge}m+1)0)]についての私の近似は、到着間隔時間Uと待ち時間Wの累積分布関数が与えられた条件でのP(Q>0)正確な式に基づいている。具体的には

  • P(Q>0)=\lambda{E}(\min\{U,W\})=\lambda\Bigint_0^{\infty}P(U{\ge}t)P(W{\ge}t)dt
    • =\lambda{P}(W>0)\Bigint_0^{\infty}P(U{\ge}t)P(D{\ge}t)dt・・・・(5.1)

である。Brumelle (1972、定理2と3)は公式(5.1)は基本的な待ち行列の関係H=\lambda{G}から演繹出来ることを示した。
 2つのコンポーネントの累積分布関数P(U{\le}t)P(D{\le}t)を、最初の2つのモーメントをマッチさせることで得た指数分布を含む便利な累積分布関数で近似することによって(5.1)に適用する。私はWhitt (1983a、p.2805)で説明した、セクションでのP(D{\le}t)についての手続きと本質的に同じ手続きに従う。計算を簡単にするために、ケース4では0.01{\le}c^2<0.501の場合シフトした指数分布(Whitt 1982b、p.138)を用い、c^2<0.01の場合決定論的分布を用いる。5×5=25ケースの全てについて積分を簡単に実行することが出来、よって近似した分布のパラメータ(\lambda,c_a^2)(ED,c_D^2)に関してP(Q>0)の閉形式の式を得ることが出来る。
 E(Q|Q{\ge}1)=(EQ)/P(Q>0)が必然的に1以上なので、P(Q>0){\le}EQでなければならない。EB=m\rho=mP(Q>0)+\Bigsum_{k=1}^mkP(N=k)なのでP(Q>0){\le}\rho。よって、最終の近似公式では、(5.1)に基づく近似を\min\{EQ,\rho,P(Q>0)\}で置き換える。
 (5.1)の代わりに使用出来る、より初歩的で粗いヒューリスティック

  • P(Q>0)\approx{P}(N(M/M/m){\ge}m+1)P(W>0)/P(W(M/M/m)>0)
    • =[P(N(M/M/m){\ge}m+1)/P(N(M/M/m){\ge}m)]
    • \times{P}(W(\rho,c_a^2,c_s^2,m){\ge}0)
    • =\rho{P}(W(\rho,c_a^2,c_s^2,m)>0)・・・・(5.2)

これはM/M/mモデルについては正確である。近似式(5.2)は、Wが到着時点での待ちであるのに対してQが任意の時点での待ち行列長であるということを考慮していないので非常に雑に見えるかもしれない。しかし、(5.2)には強力な理論的支持が存在する。H=\lambda{G}(Franken他、1981、(4.3.5)、HeymanとSobel 1982の演習11〜21)の結果として、公式(4.2)は全てのG/M/mモデルについて、非再生到着過程であろうとも、正確である。公式は、指数サービス時間の場合、部分積分と基本GI/M/m方程式、\sigma=\Bigint_0^{\infty}e^{-m(1-\sigma)/\tau}dP(U{\le}t)を用いて、(5.2)に帰着する。
 非指数サービス時間については、正確な公式(5.1)を優先すべきであるが、(5.2)は迅速な近似に有用である。