Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(36)

原文は

から入手出来ます。


5.4. システム内個数の分布
 確率関数P(N=k)の単純な近似は

  • P(N=k)=\left{\begin{array}P(Q=k-m)&k{\ge}m+1\\p(k)&0{\le}k{\le}m\end{array}

である。ただしp(k)=q(k)/\Bigsum_{j=0}^mq(j)q(j)=\alpha^je^{-\alpha}/j!である。つまりp(k)は強度\alphaを持つ切り捨てられたポアソン分布である。私は無限サーバモデルの正確な振舞いに起因する切り捨てられたポアソン近似を考察したい。M/G/\inftyシステムではNポアソン分布になる。GI/G/\inftyシステムでは重負荷の時にNは漸近的に正規分布になるので、ポアソン分布は離散的な場合の適切な対応物になるはずである。よって私はサーバ数mが大きい時にこの近似は比較的うまくいくと期待する。別の自然な2パラメータのものは二項分布である。
 ポアソン強度\alphaを指定することによってP(N=k)の近似を完成させる。これはビジーなサーバの期待数の正確な値にマッチさせることで行うことが出来る。

  • EB=m\rho=\Bigsum_{k=0}^mkP(N=k)+mP(Q>0)・・・・(5.22)

これは以下の公式を導く

  • \Bigsum_{k=0}^mkp(k)=m[\rho-P(Q>0)]・・・・(5.23)

セクション5.1のP(Q>0)に関する近似式を用いて、(5.23)を満足するポアソン強度\alphaを選択する。[セクション5.1は正確な公式と近似式の両方がP(Q>0){\le}\rhoを満たすことを示している。]
 (5.22)と(5.23)の左辺は今度は\alpha[1-B(m,\alpha)]であり、B(m,\alpha)M/M/m損失システムに対応するアーランB公式である。つまり左辺は処理される負荷である(Cooper 1982、p.89)。よって計算(5.23)は処理される負荷がm[\rho-P(Q>0)]であるとした時のM/M/m損失システムでの提供される負荷\alphaを見つけることに等価である。Jagerman (1984、pp.1289と1303)は適切な計算手続きを記述している。
 もちろん、確率関数P(N=k)についてのこの近似式はNの対応する特性についての近似式をもたらす。(5.21)〜(5.23)によってこの手続きは平均ENについての先の近似式と整合がとれているが、(5.10)でのc_N^2とセクション3.1でのP(N\{\ge}m)の近似式の新しい候補をもたらす。しかし、私はここでの近似はそれほど正確ではないと考えている。



5.5. 数値比較
 待ち行列分布の近似をHillierとYu (1981)による正確な値と比較する(表29)。考察するのはD/M/8M/E_2/8\rho=0.7\rho=0.9のケースである。これらのケースではc_a^2{\le}1c_s^2{\le}1であるが、近似は際立って正確であるように見える。(計算はM/M/mモデルについて正確である。) 一般に、トラフィック密度が増加するにつれて精度は向上する。この近似方式の最も弱い点は最初の数個の値、たとえば、確率P(Q=0)P(Q=1)、であるようである。[しかし、(5.1)はG/M/mモデルについて正確であることを思い出そう。よって表29でのD/M/mのケースではP(Q>0)における全ての誤差はP(W>0)における誤差に起因する。] 確率関数P(Q=k)と累積分布関数P(Q{\le}k)の両方はkの値が大きくなると非常に正確である。全般的に見れば、この近似は実践的な技術のためには充分正確であるように見える。


表29
GI/G/8モデルにおける待ち行列長分布の近似とHillierとYu (1981)による正確な値との比較