k≦mの時のp(k)の推定(2)――GI/G/m待ち行列の近似式(by Ward Whitt教授)へのメモ

最初に指摘しなければならないことは、式(1)

  • p(k)\approx\frac{q(k)}{\Bigsum_{j=0}^sq(j)}・・・・(1)

はおかしい、ということです。
もし式(1)が正しいのであれば

  • \Bigsum_{k=0}^sp(k)\approx\frac{\Bigsum_{k=0}^sq(k)}{\Bigsum_{j=0}^sq(j)}=1

となって

  • \Bigsum_{k=0}^sp(k)=1

となってしまいます。しかし一般にはk>sの場合のp(k)もゼロより大きい値なので

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)=\Bigsum_{k=0}^sp(k)+\Bigsum_{k=s+1}^{\infty}p(k)=1+\Bigsum_{k=s+1}^{\infty}p(k)>1

となり、全確率の定理に反することになってしまいます。
私は、これはWard Whitt教授のケアレスミスだと思います。私の考えで修正すると式(1)は

  • p(k)\approx\frac{q(k)}{\Bigsum_{j=0}^sq(j)}P(k{\le}s)・・・・(6)

になります。式(6)のようにしますと、

  • \Bigsum_{k=0}^sp(k)\approx\frac{\Bigsum_{k=0}^sq(k)}{\Bigsum_{j=0}^sq(j)P(k{\le}s)}=P(k{\le}s)

となるので

  • \Bigsum_{k=0}^sp(k)=P(k{\le}s)

となり、

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)=\Bigsum_{k=0}^sp(k)+\Bigsum_{k=s+1}^{\infty}p(k)=P(k{\le}s)+\Bigsum_{k=s+1}^{\infty}p(k)=1

つまり

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)=1

となって全確率の定理を満足します。


では、P(k{\le}s)をどうやって求めるかですが、これは

  • P(k{\le}s)=1-P(k>s)

となりますが、P(k>s)=P(k{\ge}s+1)=P(Q>0)なのでこれは「5.1. 待ち行列が空でない確率」で近似値を求めることが出来ます。