これで論文の以下の箇所は理解出来るものになりました。
についての私の近似は、到着間隔時間と待ち時間の累積分布関数が与えられた条件でのの正確な式に基づいている。具体的には
- ・・・・(5.1)
である。Brumelle (1972、定理2と3)は公式(5.1)は基本的な待ち行列の関係から演繹出来ることを示した。
さて、到着間隔時間を表す確率変数の累積分布関数は、この待ち行列システムへの条件として与えられることでしょう。あるいは累積分布関数が与えられないにしても、その平均と2乗変動係数は与えられることでしょう。平均と2乗変動係数を与えられたとしてそれにマッチする分布を推定する必要があります。これについてはこの論文のセクション4.1では少ししか説明されていません。Ward Whitt教授のQNAの論文にはもっと詳しく説明されています。(「Word Whitt: The Queueing Network Analyzer(14) 」参照。) ここで述べられている方法は2乗変動係数が1より小さい場合は2つの指数分布の畳み込みで近似し、が1より大きい場合は、バランスのとれた平均を持つ超指数分布で近似する、という方法です。
しかし待ち時間の分布は既知ではありません。待ち時間の平均は(これがこの論文の主題です)すでに近似式が与えられているので、それを用いて求めることが出来ます。待ち時間の2乗変動係数は別の式によって求める必要があります。これについては、待ち時間の2乗変動係数を直接求めるより、条件待ち時間(つまりの場合のみの待ち時間)の2乗変動係数を求めるほうが容易だということです。そして、の変動係数を求める近似式はこの論文のセクション4.1にあります。
- ・・・・(4.2)
次は、なぜこの式が成り立つのかを調べる必要があります。それは後のエントリで行うことにして、今まで述べてきたことは論文の以下の部分の補足になっていることを記しておきます。
2つのコンポーネントの累積分布関数とを、最初の2つのモーメントをマッチさせることで得た指数分布を含む便利な累積分布関数で近似することによって(5.1)に適用する。私はWhitt (1983a、p.2805)で説明した、セクション4.1でのについての手続きと本質的に同じ手続きに従う。計算を簡単にするために、ケース4ではの場合シフトした指数分布(Whitt 1982b、p.138)を用い、の場合決定論的分布を用いる。5×5=25ケースの全てについて積分を簡単に実行することが出来、よって近似した分布のパラメータとに関しての閉形式の式を得ることが出来る。
さて、
- ・・・・(4.2)
のほうですが、これについてはこの論文のセクション4.1にこのように書かれています。
公式(4.2)はモデルについては正確な公式であり、Hokstad (1978)が提案したように、モデルについての近似式として用いられる。次にをモデルと同様にモデルについての近似として用いる。この考えは条件待ち時間は到着間隔時間分布よりもサービス時間分布にずっと依存するはずだ、というものである。SeelenとTijims (1984)はこの近似方針についてさらに支持を与えた。
つまりこの式は待ち行列について正確な式であり、それをまずでも近似式として成り立つとし(この拡張を正当化する理由はこの論文には述べられていません)、それをさらに「条件待ち時間は到着間隔時間分布よりもサービス時間分布にずっと依存する」から待ち行列にも用いることが出来る、としたのでした。では、まず式(4.2)が待ち行列で正確な式として成り立つことを示さなければなりません。そのためにこのあとしばらくは待ち行列について従来より深く検討を進めていきます。