当面の目標

さて、Word Whitt教授が一般の待ち行列モデルGI/G/sにおけるジョブの平均待ち時間CT_qと、待ち確率(ジョブ到着時にジョブが待たなければならない確率)\Piの近似式としてどのような近似式を提案したかを

で示しました。どちらもなかなかややこしい式です。私はこの近似式が、実際に使用する局面において複雑すぎないかを心配しています。
精度はもう少し劣るかもしれませんが、もっと簡単な式はないものか、探そうと考えております。



まず、ジョブの平均待ち時間CT_qについてですが、私が最初に提案するのは以下の式です。

  • c_a{\le}1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2s}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{1-u}t_e・・・・(1)
  • c_a>1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2s}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{1-u}t_e・・・・(2)

です。これらの式はs=1の時には

  • c_a{\le}1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(3)
  • c_a>1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2s}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(4)

となりますが、これはKingmanの近似式c_aの値に関わらず式(4)を適用する)より精度がよい式です。たとえばD/M/1待ち行列について、つまりc_a=0c_e=1s=1についてその精度を正確な値とKingmanの近似式と式(3)とで比べてみますと下の表

のようになり、式(3)のほうが精度がよいことが分かります。また、c_a{\ge}1の場合はKingmanの近似式と式(3)(4)は一致しますから、この場合は同等です。また、c_a=1s=1の場合は式(3)(4)は

  • CT_q=\frac{1+c_e^2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・(5)

となって、ポラツェク=ヒンチンの公式と一致するので、この近似式は正確な式になります。
また、s>1c_a=c_e=1の場合は式(1)(2)は

  • CT_q=\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{1-u}t_e・・・・(6)

となりますが、これは逆瀬川の近似式と一致します。逆瀬川の近似式は「逆瀬川の近似式の精度」に示すように精度の高い近似式です。


Word Whitt教授の「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」には、いろいろな待ち行列における正確な値が引用されていますので、それらを用いて、式(1)(2)の誤差をこれから調べようと思います。