当面の目標
さて、Word Whitt教授が一般の待ち行列モデルGI/G/sにおけるジョブの平均待ち時間と、待ち確率(ジョブ到着時にジョブが待たなければならない確率)の近似式としてどのような近似式を提案したかを
で示しました。どちらもなかなかややこしい式です。私はこの近似式が、実際に使用する局面において複雑すぎないかを心配しています。
精度はもう少し劣るかもしれませんが、もっと簡単な式はないものか、探そうと考えております。
まず、ジョブの平均待ち時間についてですが、私が最初に提案するのは以下の式です。
- の時
- ・・・・(1)
- の時
- ・・・・(2)
です。これらの式はの時には
- の時
- ・・・・(3)
- の時
- ・・・・(4)
となりますが、これはKingmanの近似式(の値に関わらず式(4)を適用する)より精度がよい式です。たとえばD/M/1待ち行列について、つまり、、についてその精度を正確な値とKingmanの近似式と式(3)とで比べてみますと下の表
のようになり、式(3)のほうが精度がよいことが分かります。また、の場合はKingmanの近似式と式(3)(4)は一致しますから、この場合は同等です。また、、の場合は式(3)(4)は
- ・・・・(5)
となって、ポラツェク=ヒンチンの公式と一致するので、この近似式は正確な式になります。
また、での場合は式(1)(2)は
- ・・・・(6)
となりますが、これは逆瀬川の近似式と一致します。逆瀬川の近似式は「逆瀬川の近似式の精度」に示すように精度の高い近似式です。
Word Whitt教授の「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」には、いろいろな待ち行列における正確な値が引用されていますので、それらを用いて、式(1)(2)の誤差をこれから調べようと思います。