平均待ち行列長の近似式の精度比較(1)

当面の目標」で示したジョブの平均待ち時間の近似式

  • c_a{\le}1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2s}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{1-u}t_e・・・・(1)
  • c_a>1の時
    • CT_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2s}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}-1}}{1-u}t_e・・・・(2)

の精度をこれらか調べようと思うのですが、Word Whitt教授の論文「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」では近似式の精度の比較をする際、平均待ち時間そのものではなく平均待ち行列長で比較をしています。平均待ち時間CT_qと平均待ち行列L_qの間にはリトルの法則によって

  • L_q=CT_q\frac{su}{t_e}・・・・(7)

という関係があります。そこで、式(1)(2)を式(7)に代入すると

  • c_a{\le}1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2(u+(1-u)c_a^2)}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(8)
  • c_a>1の時
    • L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(9)

となって平均処理時間t_eに依存しなくなりますので比較するのに便利です。そこで私も式(1)(2)の平均待ち時間CT_qではなくて式(8)(9)の平均待ち行列長で近似式の値と正確な値の比較をしようと思います。


まずはM/M/sの場合の値の比較です。正確な値としては「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」の表1(「Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(8)」参照)に出ているものを使用します。さてM/M/sの場合にはc_a=c_e=1ですから式(8)(9)は

  • L_q=\frac{u^{\sqrt{2(s+1)}}}{1-u}・・・・(10)

という式になります。この式で求めたL_qの値と正確な値を比較してみます。

サーバが100台で稼働率98%の場合には両者の差の絶対値が0.5出ていますが、それ以外の場合はそれより少ない差になっています。多くの場合において差は0.1以下です。