待ち確率の近似式(5)

今まで値を比較してきた待ち行列は全て装置の処理時間分布がMであるような待ち行列でした。つまりc_e=1でした。この場合、「待ち確率の近似式(1)」で提案した待ち確率\Pi(GI/G/s)の近似式

  • \Pi(GI/G/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b\frac{2(c_a^2+c_e^2)}{(1+c_a^2)(1+c_e^2)}・・・・(35)

  • \frac{2(c_a^2+c_e^2)}{(1+c_a^2)(1+c_e^2)}・・・・(37)

の部分は

  • \frac{2(c_a^2+1)}{(1+c_a^2)(1+1)}=\frac{c_a^2+1}{1+c_a^2}=1

となります。よって近似式が実質

  • \Pi(GI/G/s)=u^{\sqrt{2(s+1)}-2}b・・・・(27)

であるような待ち行列ばかりが比較されてきました。そこで今度は、

  • \frac{2(c_a^2+c_e^2)}{(1+c_a^2)(1+c_e^2)}・・・・(37)

の部分が1にならないような待ち行列について、待ち確率\Pi(GI/G/s)の正確な値と式(35)による近似値の比較を行ってみます。



そのような待ち行列としてc_a^2=4.0であるようなH_2/D/s待ち行列を取り上げます。正確な値はWord Whitt教授の「GI/G/m待ち行列の近似(Approximations for the GI/G/m queue)」の表21(Whitt教授の「Approxomations for the GI/G/m queue」の翻訳(26)参照)から取りました。

今度は一見しておかしいことが分かります。待ち確率\Pi(GI/G/s)は確率なので

  • 0{\le}\Pi(GI/G/s){\le}1・・・・(38)

でなければならないはずが、多くの場合で近似値が1を超えています。ここから分かることは式(35)の近似式はc_e{\neq}1の場合には不適切である、ということです。では式(35)の代わりになる近似式を見出さなければなりません。