現実逃避のつづき

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タヒチのことを気ままに空想していて英雄タファキのことを思い出したのは、タヒチでは彼についての独特の伝説があるからでした。さて、急いで訂正しておかなければなりませんが、タファキという呼び方はニュージーランドのマウイ族での呼び方でして、タヒチではタファイと呼ぶほうがより正しいです。
さて、タファイは何をしたかというと、その昔、タヒチ島は大きな魚だったそうです。それは海を泳いでいました。そのことがこの島にいる人々には不安定に思われました。タファキはこの魚を固定するためには、その腱を断たなければならないと考えました。そしてついにそのことに成功し、やっとこの島は固定されたのでした。
こう簡略に書いてしまうとたわいのない話ですが、この話の細部には謎がいっぱいあります。まず、島が泳いでいた頃のタヒチのことをタヒチ・マナフネというのだそうですが、マナフネというのは「平民」の意味なので、貴族のいないタヒチ、という意味にもなります。ところがこれがなぜなのかよく分からないのですが神々のいないタヒチという意味をも持つそうです。
神々のいないタヒチ!! 何だか深い意味がありそうです。確かにタファイの物語では、タヒチに神々がいなかったことが言及されています。それはこういう場面でした。
最初、タファイとその仲間たちは石斧でこの島の各地を叩いてまわったのですが魚を固定することが出来ませんでした。そこでタファイは南に向かって船出し、トゥプアイという島にたどり着き、そこの王マレレ・ヌイに助けを求めました。マレレ・ヌイは
「おまえたちを助けたのはいかなる神々であったか」
と尋ねました。タファイは
「いかなる神も私たちを助けてくれなかった。タヒチ・マナフネは神々を持たずにそこにあるのだ。
と答えました。王はしばらく何事かを考えていましたが、テ・パ・フル・ヌイ・マ・テ・ヴァイ・タウという名を持つ、不思議な力を持つ石斧をタファイに与えました。おそらく神々の助けがなければタヒチ島である魚を止めることは出来ず、しかしタヒチには神々がいない。だから、霊力を持つ石斧を与えることで、間接的に神々の助力をタファイに与えようとマレレ・ヌイは考えたのでしょう。マレレ・ヌイの考えの通り、タファイとその仲間はこの石斧によってタヒチ島を固定することに成功したのです。


http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5f/Plage.sable.noir.Tahiti.JPG
タファイのこの功業が成ったそののちに、神々がタヒチにやってきます。神々はタヒチの西にあるライアテア島に住んでいたのでした。そこから、ある西風の強い日に、風に乗ってやってきたのでした。しかし、神々はタファイたちに幸を授けるためにやってきたのではなかったのでした。それどころか、タファイたちを殺しにやってきたのです。これまた「なんで?」というような話です。人々は山の洞穴や渓谷に逃げ込みました。その後、神々も考えを変えて、島民たちの命を助けてやるのですが・・・・。どうも神々というのはタヒチ島に新しく侵入してきた人間の集団を暗示しているようです。


この記述は

偉大なる航海者たち (1966年) (現代教養文庫)

偉大なる航海者たち (1966年) (現代教養文庫)

を参考にしました。