【論文翻訳】M/D/c待ち行列の新しい結果と古い結果(5)

2.3. 迅速な工学的近似
 M/D/c待ち行列について正確な答を計算することは難しくないが、その計算は、指数分布サービスを持つ、対応するM/M/c待ち行列についての計算より面倒である。M/M/c待ち行列では、待ち確率や平均待ち行列長や待ち時間確率のような性能尺度について、単純で明示的な式が利用可能である。例えば[5]を参照。M/D/c待ち行列のための迅速な工学的近似がM/M/c待ち行列についての結果から得ることが出来る。M/M/c待ち行列についてのErlangの待ち確率がM/D/c待ち行列における待ち確率P_{\rm{delay}}=1-W_q(0)についての非常によい近似を提供することは長い間知られてきた。さらにM/D/cにおける平均待ち行列L_q=\Bigsum_{j=c}^{\infty}(j-c)p_jと待ち時間パーセンタイル\xi(p)についての1次近似がM/M/c待ち行列における対応する結果から得ることが出来る。待ち時間パーセンタイル\xi(p)p>1-P_{\rm{delay}}の場合の等式W_q(x)=pの解として定義される。迅速な工学的近似は
L_q(\rm{\det})\approx\frac{1}{2}L_q(\exp)    と    \xi_{\det}(p)\approx\frac{1}{2}\xi_{\exp}(p)
である。表1でいくつかの例についてM/D/c待ち行列とM/M/c待ち行列についてのL_q\xi(p)の正確な値を与える。

表1. の時のM/D/c待ち行列とM/M/c待ち行列

サーバの数はc=10としサーバの稼働率\rhoは0.8と0.95に変化させている。平均サービス時間は1に正規化されている。表1での数値結果は、M/D/c待ち行列におけるL_q\xi(p)の1次近似が実務上の目的のためには非常に有用であることを裏付けている。 \rho=0.8の例では、 P_{\rm{delay}}はM/D/cでは値0.385をM/M/cでは値0.409を持ち、 \rho=0.95の例では、 P_{\rm{delay}}のそれぞれの値は0.812と0.826である。パーセンタイル \xi(p)は条件なしの待ち時間パーセンタイルである。M/D/c待ち行列における待っている客についての条件付き待ち時間パーセンタイルもまたM/M/c待ち行列における対応するパーセンタイルによって非常によく近似出来る。例えば、 c=500\rho=0.99の場合、80%条件付き待ち時間パーセンタイルはM/D/c待ち行列では値0.167を持ちM/M/cでは値0.322を持つ。95%条件付き待ち時間パーセンタイルでは値は0.305と0.599である。 c=500サーバのモデルにおいて、平均待ち行列L_qはそれぞれ37.88と74.15の値を持ち、待ち確率 P_{\rm{delay}}はそれぞれ0.725と0.749の値を持つ。
M/M/c待ち行列におけるErlangの待ち確率P_{\rm{delay}}(\exp)はM/D/c待ち行列における待ち確率の良い近似を提供する。(そしてそれは上限である)。ほとんどの場合、[8]から持ってきた以下の近似がより若干正確である。
P_{\rm{delay}}^{\rm{app}}=\left[1-\left(\frac{\eta_1}{\eta_2}-1\right)\frac{1-\rho}{\rho}\right]P_{\rm{delay}}(\exp),
ただし\eta_1=(c-1)/D\Bigint_0^D(1-(t/D))^{c-2}e^{-\lambda{t}}dt\eta_2=e^{-\rho}である。また、M/D/c待ち行列における平均待ち行列長についての近似\frac{1}{2}L_q(\exp)が[9]で提案されている以下の単純な近似式によって改善されることも言及しておく。
L_q^{\rm{app}}=\frac{1}{2}\left[1+(1-\rho)(c-1)\frac{\sqrt{4+5c}-2}{16c\rho}\right]L_q(\exp).
c=10\rho=0.8の場合、 P_{\rm{delay}}^{\rm{app}}L_q^{\rm{app}}は値として0.3875と0.879を持つ。