ブラウン運動――2.ランダムウォークからブラウン運動へ
- 図1
図1のようなランダムウォークのグラフの縦軸と横軸を縮小してブラウン運動のグラフを得ます。しかし、縦軸と横軸を同じスケールで縮小すると、ただののグラフになってしまいます。というのは式(5)から
となり、横軸を1/100に縮小しても、それは縦軸の1/10の縮小にしかならないからです。そこで、上のランダムウォークの縦軸を倍にし、横軸を倍にして、さらにとします。つまり
- ・・・・(7)
- ・・・・(8)
とおいて、とします。すると下図
- 図3
のようなブラウン運動のグラフを得ることが出来ます。このブラウン運動をで表すことにします。こうして得られたブラウン運動はもちろん各時刻においての値が確率的に変動します。そこで、の値がである確率密度を考えることが出来ます。今度はこれを求めます。初期条件としてはの時にブラウン運動の点がにあったとします。図2に示すようにランダムウォークである時刻にある位置にある確率は二項分布になります。このランダムウォークで横軸を無限に縮小するので、縮小後の横軸の値は無限小でない限り、無限大のに対応します。統計学で知られているように二項分布はの数が大きくなると正規分布に近づきます。よって、は正規分布になることが分かります。平均、標準偏差の正規分布の確率密度 の式は
- ・・・・(9)
であることが知られています。よって、時刻の時の平均と標準偏差が判ればの式が決定出来ます。まず平均は式
- ・・・・(3)
からになってもゼロであることが分かります。次に標準偏差ですが、
- ・・・・(5)
での標準偏差は式(8)でいうところのについての標準偏差です。についての標準偏差を考えるために確率変数
- ・・・・(10)
を考えます。するとについての標準偏差はと書くことが出来ます。式(10)と(5)から
ここで式(7)を用いると
- ・・・・(11)
となります。よって時刻の時のブラウン運動の点の位置の平均はゼロ、標準偏差はとなります。これらのことと式(9)から
- ・・・・(12)
となります。
さて、式(12)で表されるブラウン運動は特殊なブラウン運動です。たとえば、式(8)
- ・・・・(8)
の代わりに式(8')
- ・・・・(8')
(ただしは定数)を用いれば、式(11)の代わりに式(11')
- ・・・・(11')
が得られます。このようなブラウン運動は、点の位置の平均がゼロ、標準偏差がであるようなブラウン運動です。式(12)に対応する式は
- ・・・・(12')
となります。
さらに、軸の原点をズラすことにより、の時に任意の位置にいた場合のブラウン運動の確率密度の式を以下のように得ることが出来ます。
- ・・・・(13)
さらには、の時に点はある決まった位置にあるのではなく、初期の確率密度が与えられた場合の、任意の時刻におけるを求めることも考えられますが、ここではこれ以上追及しません。