ブラウン運動――3.ブラウン運動の微分方程式
今度は、の時の点の位置が任意であり、標準偏差がであるようなブラウン運動が満たす微分方程式を求めます。この微分方程式はあとで示すようにの時の点の位置が確率密度関数で与えられる場合にも満足します。
もう一度、前回に考えたランダムウォークに戻ります。の値がである確率を で表すことにしていました。式(6)
- ・・・・(6)
から
よって
- ・・・・(14)
ここで
- ・・・・(7)
- ・・・・(8')
とおきます。そしてにすることでブラウン運動の微分方程式を導き出します。
まず(14)に(7)(8')を代入して
- ・・・・(15)
ここで
- ・・・・(16)
とおけば、式(15)は
- ・・・・(17)
ここでさらに、
- ・・・・(18)
- ・・・・(19)
とおけば
よって
- ・・・・(20)
ここでとすると
さらに、(18)と(19)から
なので式(20)から
- ・・・・(21)
となります。
これがブラウン運動 の確率密度 が満たすべき偏微分方程式になります。
前回「2.ランダムウォークからブラウン運動へ」でお話ししたように、時刻である点にある点が時刻の時ににいる確率は式(13)
- ・・・・(13)
で与えられました。これは当然、式(21)を満足するはずです。次にこれを確かめてみます。まず(21)の左辺に式(13)を代入すると
次に(21)の右辺に式(13)を代入した結果を求めるためにまず以下を計算します。
これをさらにで微分して
よって、式(13))が式(21)を満足することが分かります。
ところで式(21)
- ・・・・(21)
は線形ですから、式(21)のある解と別の解の線形結合も式(21)の解となります。つまり、とがともに式(21)を満足するとした場合、、を定数として、を定義すると、も式(21)を満足します。これは
- ・・・・(22)
- ・・・・(23)
が成り立ち、式(22)の両辺にを掛け、式(23)の両辺にを掛け、この2つの式の両辺を足せば、
となり、結局
- ・・・・(24)
が成り立つことから分かります。同様に考えて、式(21)を満足する可算無限個の確率密度関数、ただし、と定数がある場合、
で定義されるも式(21)を満足することが分かります。の時の点の位置がであるような確率密度
- ・・・・(25)
が式(21)を満足することは先に明らかになっています。すると
で定義されるも式(21)を満足することが分かります。さらに拡張して任意の関数を考え
- ・・・・(26)
で定義されるも式(21)を満足することが分かります。ただしについては
- ・・・・(27)
を満足するという制限をつけておきます。さて、このは何を意味するのでしょう? それを明らかにするためにについて考えます。で点の位置がに確定しているということは、の時その確率密度が無限大での時確率密度がゼロということになります。さらに確率密度ですから定義域で積分した結果が1にならなければなりません。ということは
- ・・・・(28)
ということになります。ただしはディラックのデルタ関数です。式(26)から
ここで式(28)を用いると
となります。はの時の点の確率密度にほかなりませんからは式(26)で定義した確率密度関数のの時の確率密度を表していることになります。は任意でしたので、よって微分方程式(21)は の時の点の位置が確率密度関数で与えられる場合のブラウン運動の確率密度関数の場合にも成り立つことが分かります。