重負荷極限定理(2)

重負荷極限定理(1)」のつづきです。
さて、u\rightar{1}tはどんどん長くなるのですが、ここでt軸とQ軸を縮小することにより、このQ(t)ブラウン運動に近くなっていきます。具体的には

  • \tau=(1-u)^2t・・・・(12)

と置き

  • x(\tau)=(1-u)Q(t)・・・・(13)

と置きます。こうすると、今までtが大きな値にならないとQ(t)正規分布にならなかったことが、t軸を無限に縮小することにより\tau軸の任意の増加についてx(\tau)正規分布になります。このことはx(\tau)ブラウン運動になることを示しています。xの平均m_xは式(10)(13)から

  • m_x=(1-u)m_Q=(1-u)\left[Q(0)-(1-u)\frac{st}{t_e}\right]=(1-u)Q(0)-\frac{s\tau}{t_e・・・・(14)

となり、xの分散\sigma_x^2は(11)(13)から

  • \sigma_x^2=(1-u)^2\sigma_Q^2=(1-u)^2(uc_a^2+c_e^2)\frac{s}{t_e}t=(uc_a^2+c_e^2)\frac{s}{t_e}\tau・・・・(15)

となります。ここで「ブラウン運動」の「ドリフトのあるブラウン運動」の式(36)(37)と対比させると

  • b=-\frac{s}{t_e}・・・・(16)
  • a^2=(uc_a^2+c_e^2)\frac{s}{t_e}・・・・(17)

となることが分かります。「ドリフトのあるブラウン運動」の式(40)によれば、この場合、時間の経過で変化しないxの確率密度p(x)が存在して、

  • p(x)=\frac{2b}{a^2}\exp\left(\frac{2b}{a^2}x\right)・・・・(18)

となることが分かっています。これは指数分布なので確率変数xの(集合)平均をE[x]で表すと

  • E[x]=-\frac{a^2}{2b}・・・・(19)

となります。式(19)に(16)(17)を代入すると

  • E[x]=(uc_a^2+c_e^2)\frac{s}{t_e}\times\frac{t_e}{2s}

よって

  • E[x]=\frac{uc_a^2+c_e^2}{2}・・・・(20)

となります。このブラウン運動による待ち行列Q(t)の挙動の近似はu\rightar{1}の時のみ有効でしたので式(20)は

  • \lim_{u\rightar{1}}E[x]=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}・・・・(21)

と書くのがより正確に事態を表しています。


一方、式(13) のx(\tau)Q(t)は確率変数なので、その集合平均を考えることが出来ます。これをE[\cdot]で表すと

  • E[x(\tau)]=(1-u)E[Q(t)]・・・・(22)

となります。ここで待ち行列の定常状態が存在すると仮定すると

  • E[x]=(1-u)E[Q]・・・・(23)

となります。ここでE[Q]の意味を考えればそれは平均待ち行列L_qにほかなりません。よって

  • (1-u)L_q=E[x]・・・・(24)

です。式(21)と(24)から(1)

  • \lim_{u\rightar{1}}(1-u)L_q=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}・・・・(1)

を言うことが出来ます。これで式(1)が証明出来ました。