生産コストだけに注目すると危ないかも

ひさしぶりの「工場運用」ネタです。

ここに、1個50,000円で売る商品が、AとBの2つがあるとします。Aを1個作るための原材料費は40,000円だったとします。そしてBを1個作るための原材料費は45,000円だとします。そして、問題を簡単にするために、工場の運営費とか人件費だとかは無視できるくらい小さいとします。そうすると、Aの1個あたりの利益は10,000円、Bの1個あたりの利益は5,000円になります。


さて、この工場は製品A、Bどちらを作るべきでしょうか?


ここで製品製造のコストだけで判断すると、利益の多い製品Aを作るのが、工場にとっての正解、ということになります。でも本当にそうでしょうか?


もし、原材料を加工してAとBを作る装置がまったく別々の装置であったとするならば、そもそも「どちらを作るべき」という問い自体が無意味なことになります。答えはAとBの両方作ればいいじゃん、ということになります。そうではなくて、どちらを作ったらよいか、という問いが出てくるのは、きっとAと作る装置とBと作る装置が(その製造の一部の工程だけかもしれませんが)同じ装置だ、という背景があるのでしょう。


ここで問題を簡単にするために、製品AもBも原材料を共通の1台の装置で加工することで生産出来る、としましょう。装置は1台だけです。そして、製品Aをその装置で加工するには3時間の処理時間、製品Bをその装置で加工するには1時間の処理時間、かかるとします。


このような背景があるとすると、さきほど、工場は製品Aをもっぱら作るべきである、という解答は間違ってきてしまいます。


というのは、装置は製品Aを1個作成するのに3時間かかっているので、3時間で儲けは10,000円です。同様に考えると製品Bを1個作った場合には、1時間で儲けは5,000円です。ということは3時間では儲けは15,000円となり、製品Aの儲けより高くなります。よって、この場合、工場はもっぱら製品Bを生産するほうがより利潤が上がるのです。


この単純化したケースから得られる教訓は何でしょうか?


それは、製品製作時のコストだけを考えると、判断ミスを起こす可能性がある、ということです。どの製品を生産するかの決定においては、各製品のコストだけでなく、その製品を生産するのに必要となる設備の稼働率も考慮しなくてはならない、ということです。


製品を作成するのに必要な装置が2種類以上ある場合には、話がより複雑になりますが、基本的な考え方は一緒です。生産するのに必要なコストだけを判断材料にして、生産する製品を決定すると、間違った判断をするかもしれない、ということです。