無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(3)

無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)」の続きです。
無限容量のバッファの場合はそれほど難しくない(2)」の最後の式(13)

  • p[k,m]=u_1^ku_2^m(1-u_1)(1-u_2)・・・・(13)

は面白い形をしています。式(13)を

  • p[k,m]=u_1^k(1-u_1)\cdot{u_2^m}(1-u_2)・・・・(14)

のように変形すると、u_1^k(1-u_1)の部分は稼働率u_1のM/M/1待ち行列における定常状態確率です。これをp(k,u_1)=u_1^k(1-u_1)で表わすことにします。すると残りのu_2^m(1-u_2)の部分もp(m,u_2)=u_2^m(1-u_2)と書けることが分かります。よって

  • p[k,m]=p(k,u_1)p(m,u_2)・・・・(15)

となります。ここで装置Aの待ち行列に注目し、mの値がいくつであるかを考慮せずに、装置Aでのジョブの数(つまり処理中のジョブの数+装置Aを待っているジョブの数)がkである確率をp[k]で表わすことにします。すると、

  • p[k]=\Bigsum_{m=0}^{\infty}p[k,m]=p(k,u_1)\Bigsum_{m=0}^{\infty}p(m,u_2)=p(k,u_1)

よって

  • p[k]=p(k,u_1)・・・・(16)

になります。同様にして

  • p[m]=p(m,u_2)・・・・(17)

となります。つまり、この工場の待ち行列の定常状態確率は、装置Aと装置Bを独立の待ち行列と考えてもかまわない、ということです。そこで装置A、装置B別々にM/M/1待ち行列として考えれば、装置Aでのサイクルタイムは

  • \frac{1}{1-u_1}t_{e1}・・・・(18)

となり、装置Bでのサイクルタイムは

  • \frac{1}{1-u_2}t_{e2}・・・・(19)

となります。よって工場全体のサイクルタイムCT

  • CT=\frac{1}{1-u_1}t_{e1}+\frac{1}{1-u_2}t_{e2}・・・・(20)

となります。ところでスループット\lambdaでした。また、

  • u_1=\frac{\lambda}{\mu_1}=\lambda{t}_{e1}・・・・(21)
  • u_2=\frac{\lambda}{\mu_2}=\lambda{t}_{e2}・・・・(22)

なので、これらを式(20)に代入するとこの工場におけるスループットとサイクルタイムの関係式が得られます。

  • CT=\frac{1}{1-\lambda{t}_{e1}}t_{e1}+\frac{1}{1-\lambda{t}_{e2}}t_{e2}・・・・(23)

これで、当初目的としていた、この工場のスループットとサイクルタイムの関係式を得ることが出来ました。このように図2のような

  • 図2

各装置前のバッファの容量が無限の場合には、その挙動の解析が比較的簡単なのですが、図1

  • 図1

のように、2番目の装置(=装置B)の前のバッファの容量が有限の場合には、このような解析がうまくいきません。
今度は図1の場合になぜ上記の解析が適用出来ないかを説明します。